
明日から同行なしで訪問。急変したらどうしよう。

判断に迷ったとき、誰に聞けばいいんだろう。
独り立ちを目前にして、眠れないほど不安になる方は少なくありません。
その不安は、あなたの経験不足だけが理由ではありません。
利用者さんのご自宅という、すぐ近くに同僚がいない環境で判断することへの不安が重なっています。
私は理学療法士として18年、うち10年以上を訪問看護ステーションで勤務し、一人での訪問と、後輩への同行の両方を経験してきました。
この記事は、訪問スタッフとしての経験をもとに書いています。
不安を「自分は向いていない」で終わらせず、今の職場や転職先に何を確認すればよいかが分かる内容です。
訪問看護の一人訪問が不安になる3つの理由

一人での訪問を不安に感じるとき、原因は一つではありません。大きく3つに分けて考えると整理しやすくなります。
- 知識や技術に、まだ自信が持てない
- 一人で判断する環境そのものに慣れていない
- 迷ったときに相談できる体制が見えていない
1つ目は、経験を重ねながら補っていくものです。
2つ目は、訪問という働き方特有のもので、訪問を重ねることで少しずつ慣れていくことが多いものです。
3つ目は、経験を積むだけでは解消しにくく、職場側の仕組みも必要になります。
不安の正体は、今できないことよりも「もし、こうなったらどうしよう」という予測にあります。
この予測への備えは、一人で背負うものではなく、事業所として用意しておくものです。

3つのうち、自分で努力できるのは1つ目と2つ目です。
3つ目まで自分の頑張りで何とかしようとすると、消耗します。分けて考えてください。
訪問看護の同行期間は日数だけで判断できない

「同行が短かった」と感じる背景には、覚えることの多さがあります。
訪問看護の同行は、ケアの手順を教わるだけの時間ではありません。
これだけの情報を、限られた回数で受け取っていきます。訪問看護は週1回程度の利用者さんも珍しくありません。
4回訪問して、ようやく1か月です。

私自身、新人の頃は同行期間が短く感じられて不安でした。
技術以前に、覚えることの量と訪問頻度の少なさが、そう感じさせていたのだと今は分かります。
同行期間や独り立ちまでの進め方は、職場、本人の経験、担当する利用者さんの状態によって変わります。
一律に「何日なら十分」とは言えません。
そのうえ、同行の終わり方を明確に決めていない職場もあります。
多くは上司や先輩の判断に委ねられていますが、「いつまで同行してもらえるのか分からない」という状態は、それだけで不安を大きくします。
だからこそ、期間の長さよりも、独り立ちをどう判断するのか、その後にどう支えてもらえるのかを確認してください。
訪問看護の同行で引き継ぐのは技術だけではない

同行の多くは、すでに他のスタッフが担当している利用者さんに付いていく形で行われます。ここには、新規の利用者さんの訪問をすることとは違う難しさがあります。
利用者さんにとっても、新しい担当者との関係づくりが始まります。
ご自身の病状や生活の状況を、また一から説明する負担も生まれます。つまり、気を遣うのは訪問する側だけではありません。
一方で、迎える立場になって気づいたことがあります。同行の時間にしか渡せないものがある、ということです。
- 訪問中に、その場で注意点を伝えられる
- 訪問直後に、利用者さんの目の届かない場所で、配慮すべきことを直接話せる
- 利用者さんと新しい担当者のあいだで、関係づくりの仲介役になれる
とくに2つ目は、記録だけではニュアンスまで伝わりにくい情報です。
ご家庭ごとの事情や、言葉をかけるタイミングなどは、記録を確認したうえで、訪問直後に口頭でも補足すると理解しやすくなります。

同行は「見て覚える時間」ではなく、「言葉にしにくいことを手渡す時間」だと思っています。この受け渡しがある職場かどうかで、独り立ち後の心細さは変わります。
訪問看護の独り立ち前に確認したい3つの体制

ここからが本題です。経験や技術を補いながら、同時に確認しておきたい体制が3つあります。
体制1 訪問中に相談できるか
判断に迷った瞬間に連絡できるかどうかが、最初の分かれ目です。
連絡先が決まっていて、実際につながる状態であれば、一人で判断を抱え込むリスクを減らせます。
体制2 訪問のあとに振り返れるか
その場で対応できても、「あの判断でよかったのか」という迷いは残ります。
持ち帰った不安を話せる場があるかどうかで、次の訪問への向かい方が変わります。
体制3 急変・事故の手順が共有されているか
一人での訪問で最も不安になるのは、想定外のことが起きた場面です。
誰にどの順番で連絡するのか、どこまでが自分の判断範囲なのか。
事業所として手順が共有されていれば、迷いは小さくなります。
なお、生命に関わる緊急性が疑われる場面では、連絡相手の返答を待ち続けず、勤務先で定められた緊急時の手順や119番通報に従ってください。
個々の医療判断については、勤務先の手順書と主治医の指示、管理者への確認が優先されます。

独り立ちの前には、必要な手技とあわせて「困ったときの動き方」を共有しておくことが大切だと考えています。この3つがはっきりしていれば、一人で訪問するときも、判断を抱え込みにくくなります。
看護師の方で、担当者を通して職場の情報を確認したい場合は、看護師専門のサービスもあります。
訪問看護でそのまま使える質問リスト

抽象的に「体制を確認しましょう」と言われても、実際に何を聞けばよいか迷います。
管理者との面談や、転職先の見学・面接でそのまま使える質問をまとめました。
独り立ちの進め方について
訪問中の相談について
訪問後の振り返りについて
急変・事故への備えについて

質問すること自体をためらう方がいますが、これらは働くうえで当然の確認事項です。質問の背景を添えることで、安全に働くための確認であることが伝わりやすくなります。
訪問看護の今の職場で相談できないときの選択肢

質問しても答えが曖昧、相談しても「慣れるしかない」で終わる。
そうした状態が続くなら、今の職場の体制を見直す時期かもしれません。
まずは管理者に、具体的な言葉で伝えてみてください。
それでも変わらないのであれば、環境を変えることも選択肢の一つです。
- 同じ訪問看護のまま職場を変えたい方は、【体験談】訪問看護ステーションを変えたい…同じ訪問看護へ2回転職した私が語る判断基準3つと面接での伝え方【理学療法士18年】
- これから訪問看護へ入職する方は、【不安解消】訪問看護は未経験でも大丈夫?不安の正体3つと失敗しない職場の選び方【理学療法士18年】
- 退職まで考えている方は、【体験談】訪問看護を辞めたい…退職理由でわかる5つの選択肢と優良ステーションの見分け方【理学療法士18年】
看護師の方は、担当者に職場の雰囲気や教育体制を聞くこともできます。
よくある質問

- Q追加の同行をお願いしたら、迷惑に思われませんか?
- A
迷惑ではありません。不安が残るケースを具体的に伝え、必要な支援を相談することは、安全に訪問するために大切なことです。
「この利用者さんのケアに不安があるので、もう一度同行をお願いしたい」と、対象と理由を添えて伝えてみてください。
- Q訪問中に電話で相談すると、責められる職場もあると聞きました。
- A
相談したことを責める対応が続くなら、それは体制ではなく職場の文化の問題です。管理者に改善を求めても変わらない場合は、環境を変える判断材料になります。現場にて相談し、適切に判断できることは不安を解消できます。
- Q面接で相談体制を質問すると、印象に影響がでませんか?
- A
入職後の働き方を確認するための、不自然な質問ではありません。「一人で働くのがこわいから」ではなく、「安全に対応するため、独り立ち後の連絡体制を確認したい」と伝えると、質問の意図が伝わりやすくなります。答えを濁す職場かどうかを見極める材料にもなります。
- Qオンコールの独り立ちも、通常の訪問と同じように考えていいですか?
- A
別に確認してください。日中の訪問とは対応の流れも相談先も変わります。
オンコールの負担については【不安解消】訪問看護のオンコールがきつい理由と、負担を減らす4つの視点【理学療法士18年】で解説しています。
- Q不安が消えないのは、訪問看護に向いていないからでしょうか?
- A
不安があることだけで、向き不向きは判断できません。知識や経験による不安と、職場の体制による不安を分けて考えてみてください。
相談先が分からない状態が続いているなら、まず管理者に確認することから始まります。
まとめ 一人で訪問しても、一人で抱えない準備を

一人での訪問が不安になるのは、経験不足だけが理由ではありません。
相談先や緊急時の手順が見えていないことでも、不安は大きくなります。
独り立ちの前後に、次の3つを確認してください。
不安をすべて自分の適性のせいにせず、足りない経験を補える仕組みがあるかどうかを見ていきましょう。

私が同行した後輩のなかには、独り立ち後も迷った場面で相談しながら、少しずつ対応の幅を広げていった人がいました。相談できる環境があるかどうかは、それくらい大きな差になります。
看護師の方で、担当者に相談しながら進めたい場合は、看護師専門のサービスという選択肢もあります。


