
訪問看護に移ろうか迷っている。楽しいと聞くけれど、すぐ辞める人も多いと聞く。

訪問に出て3か月。道を覚えるだけで精一杯で、まだ楽しいと思えない。
訪問看護に興味はあるけれど、自分に合う仕事なのか分からない。働き始めたものの、まだ楽しさを感じる余裕がない。
楽しいと感じる瞬間は、
人に語れる場面がある。
理学療法士として18年、訪問看護ステーションで約10年勤務してきました。この記事で紹介するのは、訪問看護ステーションから理学療法士が訪問して行うリハビリの体験です。制度上の訪問リハビリテーションとは異なります。
- 利用者さんの「やりたい」が達成できた
- 会話の少なかった人が心を開いた
- 自分の工夫が結果になった
- チームで暮らしを守れた
- 休憩中に季節を感じた
そして、その裏側には大変なことが4つあります。看護師の仕事については、私が見てきた範囲で書き、リハビリ職の立場との違いも添えます。
この記事を読むことで、楽しさと大変さの両方を知ったうえで、自分が楽しめそうかを判断できます。
あなたが納得して選んだ場所で働くことが、利用者さんの暮らしを支える力になります。
看護師の方で、担当者に相談しながら進めたい場合は、看護師専門のサービスという選択肢もあります。
訪問看護が楽しいと感じる瞬間5選

訪問看護の楽しさは、特別な出来事ではありません。同じ人の家に通い続けるなかで見つかります。
利用者さんの「やりたい」を、その人の家で一緒にかなえられたとき
訪問看護では、リハビリの目標を利用者さんの願いにそのまま置けます。
足を動かしにくく、入浴や車の乗り降りに困っていた利用者さんを担当したときの話です。
浴槽をまたぐときに足が十分に上がらず、入浴は看護師が介助していました。車の乗り降りでも足が持ち上がらず、時間がかかっていました。
もともと温泉やハイキングが好きな、活動的な方でした。もう一度、好きな温泉に行きたいという願いがありました。
私がしたのは3つです。
訪問を始めて3か月後、その方は日帰りの温泉に浸かれました。
気分が明るくなったことは、今でも印象に残っています。

温泉に行くという目標を立てられたのは、生活の場に入っていたからです。浴槽をまたぐ動作そのものより、その先にある行き先が目標になります。
最初は会話の少なかった利用者さんが、少しずつ心を開いてくれたとき
訪問は長く続くので、関係が変わっていく過程を見られます。
主治医やご家族のすすめで訪問が始まった利用者さんがいました。
バイタル測定には協力的でした。ただ、持病があって倦怠感も強く、運動には気が進まない様子でした。
一方で、散歩や公園の植木を見に行くことには前向きでした。そこで、まず車椅子で公園まで移動することを中心に介入しました。
公園のなかを少し歩き、セミの声やトンボの姿にふれます。そのうちに、もっと動きたいと口にされるようになりました。
お店に行きたい。外食したい。知人に会いたい。
希望を直接、言葉にして話してくださることが増えました。

気乗りしないところから始まった訪問でも、希望を言葉にしてもらえる関係は築けます。運動の話を急がなかったことが、結果的に近道でした。
自分で考えた工夫が、次の訪問で結果になって返ってきたとき
自宅の環境を整える工夫は、効果が早く出る印象があります。
膝に痛みのある利用者さんを担当していました。ベッドから起き上がるときに、何度も滑り落ちていたそうです。
ご本人は、立ち上がりやすいようにベッドを高めに設定していました。
ベッドの高さは、起き上がりと立ち上がりで諸刃の剣になります。
立ち上がりやすさだけでなく、起き上がって座ったときに足が床につき、姿勢を保てるかも確認しました。そのうえで、体格と動作に合わせて高さを調整しました。
ちょうどよい高さは体格や症状で変わります。担当のリハビリ職や福祉用具の担当者と一緒に決めてください。

高さを変えるだけなら数分の作業です。その数分で暮らしが変わるところが、在宅のおもしろさだと思っています。
ご家族やケアマネジャーと組んで、自宅での暮らしを続けられたとき
一人では抱えきれない出来事も、チームでなら乗り越えられます。
同居するご家族の支えで暮らしていた利用者さんに、訪問していたときの話です。ご家族のサポートがなければ、生活が難しい状況でした。
そんなある日、そのご家族が急に入院することになりました。
利用者さん一人での在宅生活は難しく、かといって施設にすぐ入居できるわけでもありません。
まず相談した相手は、ケアマネジャーです。
施設入所のめどが立つまでは、病院のレスパイト入院とショートステイでつなぎました。そのあとは施設で過ごし、ご家族の退院を待ちます。
その間も自宅での生活の様子をケアマネジャーに共有し、家に戻るときに困らないようポイントを伝えていました。
一時的に自宅を離れる期間はありましたが、ご家族の退院後、利用者さんも自宅での暮らしを再開できました。体の状態も動作の能力も落ちることなく、それまでと同じサービスを利用して過ごすことができています。

私一人でできることは限られています。それでも、つなぐ相手を知っていれば道はできます。ご家族にとっては大変な出来事でしたが、チームで支えて自宅での暮らしにつなげられたときには手応えがあります。
休憩時間に、季節や街の変化を感じられるとき
訪問看護は、移動のある仕事です。
休憩時間には、利用者さんの家の近くの公園で桜を眺めて過ごすこともあります。ウグイスやスズメの鳴き声で季節を感じます。
医療機関や施設で働いていたころは、ほとんど室内で過ごしていました。業務にあたっている間は、雨が降っていることにも気づきません。
卒業式や入学式の時期には、保護者の方と、新しい制服を着た子どもたちの姿を見かけます。次の家へ移動する途中で、担当している利用者さんに偶然出会うこともあります。庭先で用事をされていたり、ご家族に車椅子を押してもらって出かけていたり。
声をかけられないこともありますが、在宅生活を送れているのだと感じる場面です。
病院から訪問へ移ったときの働き方の変化は、【転職】理学療法士が医療機関から訪問看護ステーションに転職して感じたメリット・デメリット3選にもまとめています。
訪問看護で理学療法士としてやりがいを感じた瞬間3選

理学療法士として関わるなかで、とくにやりがいを感じた場面です。暮らしの変化を見届ける喜びは看護師とも重なります。
私は理学療法士として、動作の工夫や生活環境の調整に、他の職種と協力して取り組んできました。
利用者さんがリハビリの訪問を終了していくとき
リハビリの訪問には、終わりという形の成果があります。
要支援の利用者さんで、生活の範囲が広がった方がいました。デイサービスの利用が決まり、リハビリの訪問は終了です。
自主トレーニングの方法が定着し、在宅生活が安定したことで訪問を終えた方もいます。
退院したあとの数か月、数年の変化を見届けられるとき
病院のリハビリでは、退院後の生活を見据えて目標を立てます。
ただ、病院で働いていたころの私には、実際に暮らす場を確認した経験がありませんでした。
訪問看護のリハビリ職になって分かったことがあります。
退院前にどれだけ考え尽くし、多職種で知恵を合わせても、実際に暮らし始めると課題が出てきます。
日中は室内でも杖を使って歩いていた利用者さんが、夜中にトイレへ行くときに転倒しました。夜は杖を使うことを忘れていました。
病院では夜間の移動でも杖を忘れることはなかったと聞いていました。それでも、実際の生活になると思いもしないことが起きます。
据え置き式の手すりを置いてからは、夜間も手すりを使って移動できるようになりました。
手すりの種類や置き場所は人によって変わるため、福祉用具の担当者と一緒に決めてください。
在宅に戻ったあとも、加齢による体力の低下や転倒は起こります。
進行する病気なら、病状に合わせて介護や医療のサービスを入れ直し、福祉用具も変えていく必要があります。
主治医へ報告し、判断を仰ぐ場面も増えていきました。

臨機応変に、かつ丁寧な対応が求められるところを、私は楽しいと感じています。退院直後に出てきた課題に向き合えるのは、その後を見られる立場だからです。
同じステーションの看護師と相談しながら、体調に合わせてリハビリができるとき
訪問看護ステーションのリハビリ職は、看護師と同じ事業所で動きます。
私の職場では、リハビリ職が先に訪問し、そのあとに看護師が訪問する日がありました。
訪問中に普段と違う体調の変化があれば、その場で看護師などに連絡し、対応を相談します。
緊急性が疑われる場合は、返事や次の訪問を待たず、勤務先の緊急時の手順に沿って119番通報などの対応を取ってください。
観察したことと対応した内容は、その後に訪問するスタッフにも共有します。伝えておくと、次の訪問で注意して観察でき、必要なときには主治医へ報告もできます。

一人で訪問していても、一人で背負っているわけではありません。訪問先から共有した情報が次の訪問に生きたと分かるときは、チームで診ている実感があります。
訪問看護で大変なこと4選

楽しさだけを並べても、現場は伝わりません。大変なことは4つあり、そのほとんどが楽しさと裏表です。
一人の訪問先で、対応を求められる
訪問先で判断を迫られる場面は、慣れるまで気が重いものです。
独居の方が転んで動けないとき、救急搬送が必要かどうかを自分で見立てることになります。
一人で訪問していても、判断を一人で抱える必要はありません。困ったときに訪問先から相談できる連絡体制が大切です。
その一方で、自分で考えた工夫の結果を、次の訪問で直接確かめられるのも訪問の仕事です。
独り立ちまでに確認しておきたい体制は、【不安解消】訪問看護の一人訪問が不安…独り立ち前に確認したい3つの体制にまとめています。
オンコールの負担がある
オンコールを担当する看護師にとっては、勤務時間外の連絡や出動に備える時間も負担になります。
私はリハビリ職として訪問していたので、オンコールの当番はしていません。だからこそ、当番の回数や手当、相談できる体制は入職前に確かめてください。
当番の回数も手当も、後ろで支えてくれる体制も、事業所ごとに全く違います。
負担を減らす考え方は、【不安解消】訪問看護のオンコールがきつい理由と、負担を減らす4つの視点で解説しています。
雨や暑さ、寒さのなかを移動する
外で働く仕事なので、天候はそのまま負担になります。
雨の日の自転車移動も、真夏の車内も、体力を削ります。
季節を感じられる楽しさと、天候の負担は、同じところから来ています。道具と工夫で軽くできる部分は、【訪問看護スタッフ必見】自転車移動がきついと感じたら?雨天対策や入職前の相談ポイントまとめを参考にしてください。
ご家族との距離感に気をつかう
訪問では、利用者さんだけでなくご家族とも関係を築きます。
心配で何でも知りたいご家族もいれば、こちらに任せてくださるご家族もいます。同じ説明でも受け取り方は変わります。
ここに時間をかけられると、チームで暮らしを守れたときの喜びにつながります。距離感の取り方は、【訪問看護スタッフ向け】利用者さんとご家族様の価値観に寄り添う大切さに書いています。
訪問看護が楽しいと思えるまで、私の場合は6か月

楽しいと感じるまでには時間がかかりました。
慣れるまでの時間は、経験や担当する利用者さん、職場の支援体制によって変わります。半年たって楽しめなくても、自分に向いていないと決める必要はありません。
最初の3か月は、道と段取りを覚える時期
入職して最初に大事なのは、利用者さんの家の場所を覚えることです。
自転車やバイクでの訪問では、目的地までどのくらいかかるのかという感覚がつかめません。地図アプリで計測しても、曜日や時間帯で交通事情は大きく変わります。
とくに線路をまたぐ道は、電車の通過や踏切が開く時間まで読めません。
事務所から利用者さんの家までの距離は分かります。それでも、利用者さんの家から次の利用者さんの家までとなると、感覚がつかめずに苦労しました。
私の場合は、3か月ほどで定期的に訪問する方の家の場所と、駐車や駐輪の場所が頭に入りました。地図を確認する手間がなくなり、訪問の時間が読めるようになります。
時間が読めると、訪問の隙間にケアマネジャーへ連絡したり、ご家族へ報告したりできます。計画書や報告書をオンラインで作れる職場なら、書類の時間にも充てられます。
訪問の業務そのものにも、慣れが必要でした。
私の職場では、訪問のたびに次の項目を確認していました。
私が病院や施設で理学療法士として働いていたころは、看護師などの記録から体調や生活の情報を確認する場面が多かったです。訪問先では、ご本人やご家族への聞き取りと、その場での観察から情報を集める機会が増えます。
慣れてくると、食事や睡眠、転倒の有無を会話で確かめながら測定できます。限られた訪問時間のなかで、段取りよく進められるようになります。

覚えることが多い時期に、楽しさを探さなくて大丈夫です。私も最初の数か月は、道と時間のことで頭がいっぱいでした。
独り立ちの直後は、判断がこわい時期
一人で訪問し始めると、判断の重さが一気に近づきました。
こわかったのは、独居の利用者さんが転んで動けない場面です。救急搬送が必要かどうかを、その場で見立てることになります。
こういう場面こそ、一人で抱えずに訪問先から連絡してください。緊急性が疑われるときは、返事を待たずに勤務先の手順に沿って動きます。
対応の方法は事業所ごとに決まっています。私は手順を何回も見直して、不安がやわらぐようにしました。
指定難病などで医学的な処置がある利用者さんは、事前に看護師へ状況と医療機器を確認しました。自分でも調べてから訪問しています。

手順書を読み込む時間は、遠回りに見えて一番の近道でした。私の場合は、手順の確認と相談先の把握で、不安が少しやわらぎました。
6か月ごろ、楽しさが出てくる時期
私が楽しいと感じられるようになったのは、6か月を過ぎたころです。
長く訪問していると、課題が次々に出てきます。
歩行の補助具を変える。福祉用具を入れる。介護サービスを組み直す。
一つずつ対応して、利用者さんが暮らしを続けられている。その支えになれたと感じるときに、楽しさがあります。
利用者さんから、あんたが来てくれるようになったおかげで生活できていると言われることもありました。
うれしい言葉でした。同時に、私が訪問しない時間も安心して暮らせるように、ご本人の力と周りの支えを大事にしたいと感じました。
在宅生活の主役は、利用者さん自身です。

自分の訪問が依存につながらない距離感が必要だと、経験を重ねるほど感じます。ご本人の希望を中心に、ご家族の事情にも耳を傾ける姿勢を保つことは、今の私の課題でもあります。
退院のときには無理だと諦めていた屋外の歩行が、訪問中だけでもできるようになる日がありました。すると、公園に行きたい、お店に行きたいと希望が出てきます。目的が、歩くことから出かけることへ変わります。
利用者さん自身が目的を語り出す瞬間は、何度立ち会っても楽しいものです。
訪問看護が楽しくないときは職場との相性を見直す

楽しくない原因は、仕事ではなく職場にあることがあります。
訪問看護の仕事は好きなのに、会社のやり方が合わずに辞めたという声もあります。1日の訪問件数もオンコールの体制も、会社の方針も、事業所ごとに全く違うからです。
職場の見分け方は、【体験談】訪問看護を辞めたい…退職理由でわかる5つの選択肢と優良ステーションの見分け方の優良ステーションの見分け方5つを読んでください。
そもそも自分に合う仕事なのかを確かめたい方は、【不安解消】訪問看護に向いている人の特徴7選と向いていない人6選の適性チェックが役に立ちます。
看護師の方で、担当者に相談しながら進めたい場合は、看護師専門のサービスという選択肢もあります。
訪問看護の楽しさについてよくある質問

- Q経験が浅くても、訪問看護は楽しめますか?
- A
経験が浅くても、楽しさを感じながら働いている人はいます。慣れるまでの時間には個人差があります。私の場合は、道と段取りに慣れるまで3か月、楽しさを感じるまで6か月でした。同行の期間や相談できる体制は事業所ごとに違うので、入職前に確認してください。未経験の不安の中身は【不安解消】訪問看護は未経験でも大丈夫?不安の正体3つと失敗しない職場の選び方5選で整理しています。
- Q入職して1か月ほどで辞める人がいるのはなぜですか?
- A
理由は人によって違いますが、私が見てきた範囲では、仕事の中身より条件の食い違いが多い印象です。担当したい分野を持てない、訪問の時間帯が生活に合わないといった理由です。最初の1か月は覚えることが多く、楽しさを感じる前の時期でもあります。
- Q子育て中でも、訪問看護を楽しく続けられますか?
- A
私の周りにも、子育てをしながら訪問看護を続けている人がいます。確認したいのは4つです。オンコールの有無と回数、急に休むときの代わりの体制、残業の実態、記録が勤務時間内に終わるかどうか。どれも事業所ごとに違うので、求人票と面接で具体的に聞いてください。訪問の時間が読めるようになると、生活との組み立てもしやすくなります。
- Q看護師とリハビリ職で、楽しさは違いますか?
- A
利用者さんの希望を支えたり、暮らしの変化を見届けたりする喜びは重なります。この記事で紹介しているのは、理学療法士として経験した、動作の工夫や生活環境の調整、リハビリの訪問終了に向けた支援が中心です。
- Q病院と訪問看護では、いちばん何が違いますか?
- A
生活の場に入ることです。私が病院で理学療法士として働いていたころは、看護師などの記録から体調や生活の情報を確認する場面が多くありました。訪問先では、ご本人やご家族への聞き取りと、その場での観察から情報を集めます。退院前には見えなかった暮らしの課題まで扱えるのが、訪問の面白さです。
まとめ 訪問看護の楽しさは、同じ人の家に通い続けるなかで見つかる

最後に、この記事の要点です。
訪問看護の楽しさは、劇的な出来事ではありません。同じ人の家に通い続けるなかで、少しずつ見つかります。

私も最初の数か月は、道を覚えることで精一杯でした。今は、利用者さんが自分から行きたい場所を語り出す瞬間が楽しみで訪問しています。

