
理学療法士として18年間従事し、在宅での訪問リハビリとしては11年間を在宅でのサービスに関わってきました。
在宅介護では、食事やトイレと同じように「入浴」も大切なケアのひとつです。しかし浴室は危険が多く、介護する側にとっても負担がかかりやすい場面でもあります。
特に排泄物で体が汚れるなど急な浴槽の利用は慌ててしまうこともあり、安全性が損なわれやすいです。
この記事では、在宅でご家族を介護している人に向けて、安全に入浴介助を行うための選択肢や工夫、専門職の活用法について解説します。
在宅での入浴を介助する方法
在宅での入浴のサポートには、複数の選択肢があります。
訪問入浴サービス

組み立て式の浴槽を自宅に持ち込み、座る必要がなく、入浴できるサービス。
看護師を含む2〜3人の介助者にて、ハンモックのような補助具を利用して湯船に浸かることができます。
体を洗う、シャンプーを流すことも援助があります。
デメリットは利用料金がかかる(1割負担で1200円程度)、事業所数が少ないため、スケジュール調整が難航することがあります。
訪問看護の看護師による入浴介助

医療的な管理が必要な方でも、看護師が安全を確認しながら入浴をサポート。
入浴前の血圧、体温などの体調の確認も行います。
体調が優れない場合は、入浴ではなく、清拭での対応もできます。
訪問介護(ヘルパー)による入浴介助

手順に沿った入浴のサポートを受けられるため、家族の負担を軽減。
浴槽に浸かった際の見守りや体を洗うことをサポートします。
ヘルパーさんの年齢は比較的高いため、介助量が大きい場合には対応が困難なこともあります。
主介護者による入浴介助

ご家族が中心となる最も日常的な方法。シャワー浴から浴槽浴まで状況に応じて対応可能。
介護保険サービスが第一選択になるケース
次のような場合は、まず介護保険サービスの利用を検討することが大切です。
- 自宅に浴室がない場合
- 自力で立位姿勢を保つことが難しい場合
- 医療的管理が必要で家族だけで
- 入浴介助が不安な場合
このようなケースでは、ベッド上での清拭が中心となることもあります。
一方、夏場は主介護者によるシャワー浴が適していることもあり、排泄物による汚染が起きた場合などやむを得ない事情で入浴が必要になることもあります。
家族が行う入浴介助を安全にするためのアイテム
シャワーチェア(介護保険適用)
体を洗う際の姿勢保持にとても便利。
転倒予防にも役立つため、必須ともいえるアイテムです。
椅子の高さを調整することができ、背もたれや肘掛けがあるタイプもあります。
滑り止めシート(介護保険 非適応)
浴槽をまたぐ動作や、浴槽内での立ち座りが不安定な方に有効。
転倒リスクを大幅に軽減します。
浴室だけでなく、浴槽の底は滑りやすい形状です。
浴槽からの立ち上がりにおいて転倒の危険性や、介助する側にも腰痛を誘発しやすいため、安全面を高められます。
自宅の浴室環境は千差万別。専門職の助言が効果的
浴室の形、深さ、手すりの有無、カランの位置など、家庭ごとの差は非常に大きく、「一般的な介助方法」をそのまま適用できないこともあります。
そのため、訪問リハビリなどの専門職によるアドバイスは大きな助けになります。
専門職ができるサポート
- 安全に動ける介助手順の提案
- 腰痛を予防する介助者の姿勢・動き方の指導
- 家の構造に合わせた福祉用具の選定
- 利用者の身体機能に沿った「できる動作」の見極め
家族の身体的・精神的な負担を減らすうえでも、専門家の力は非常に頼りになります。
設計段階から関わったた印象に残るケース
訪問リハビリ2年目に担当した60歳代の脳梗塞の男性のケースをご紹介します。
退院を機にご自宅を建て直すこととなり、仮住まいでの訪問リハビリを開始しました。
通常は既存の浴室に合わせて入浴動作を検討することが多いのですが、このケースではなんと家の設計段階から関わることができました。
設計段階で検討したポイント
- 手すりを設置する位置
- 浴槽の形・高さ
- カラン(蛇口)の位置や高さ
- 浴室の間口や動線
現在の身体状態だけでなく、今後年齢を重ねた際にも安全に入浴できるよう、建築士の方と相談しながら環境を整えていきました。
この経験を通して、入浴介助の奥深さと「安全な動作とは何か」を改めて考える貴重な機会となりました。
まとめ:専門家を味方につけて安全な入浴介助を
設計段階から関わることは少ないものの、今ある浴室に合わせて「より安全・よりラク」な入浴介助を実現する方法は必ずあります。
理学療法士などのリハビリ専門職は、福祉用具の使い方や環境調整、介助手順など、家族だけでは気づきにくいポイントを丁寧に提案できます。
在宅介護の入浴は、家族にとって大きな負担になる場面でもありますが、適切な道具・環境調整・専門家の助言があれば、安心して続けることができます。

