
病院の相談員から「退院後は老健か特養を考えましょう」と言われた。何が違うの?

老健は、3か月で出ないといけないと聞いた。そのあと、親はどうなるの?
親の退院が近づき、特養と老健のどちらがいいのか迷っていませんか?
家に帰る準備をする施設かどうかで整理できます。
私は理学療法士として、老健(介護老人保健施設)の入所と通所を兼務し、4年働きました。 家に帰る準備をする方にも、長く入所する方にも関わってきました。
- 特養は原則要介護3以上、老健は要介護1以上
- 老健は3か月ごとに、家に帰れるかを話し合う
- どちらが安いかは、部屋の種類で入れ替わる
- 老健は、入所者100人に1人以上の医師を置く
- 老健のリハビリは、少なくとも週2回程度
この記事を読むことで、親の今の状態なら、どちらを先に考えるかを決められるようになります。 病院の相談員との次の話し合いを、親の暮らしを選ぶ時間にしてください。
親に合う施設を探すなら、私のおすすめは「みんなの介護」です。
特養と老健の違い 5選

特養は介護を受けながら暮らす場所で、老健はリハビリをして家に帰る準備をする場所です。この2つの役割の違いから、下記の5つの違いが生まれます。

要介護高齢者のための生活施設。
出典:厚生労働省「介護老人福祉施設・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護」(社会保障審議会 介護給付費分科会 第260回 資料1・2026年7月9日・p.3)
在宅復帰、在宅療養支援のための地域拠点となる施設
出典:厚生労働省「介護老人保健施設」(社会保障審議会 介護給付費分科会 第260回 資料2・2026年7月9日・p.4)
入所の条件:特養は原則要介護3以上、老健は要介護1以上
老健は、要介護1から入所の対象です。
介護老人福祉施設は、要支援1・2の人は利用できません。 また、新たに入所する要介護1・2の人もやむを得ない理由がある場合以外は利用できません。
出典:厚生労働省 介護サービス情報公表システム「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)」
要介護1・2でも、下記のような事情があれば、市町村が関わって特養に入れる場合があります。

入所の期間:老健は3か月ごとに、家に帰れるかを話し合う
話し合うのは、医師・看護職員・介護職員・相談員などで、最初の話し合いは入所してすぐです。 「3か月で出ないといけない」という決まりではありません。
老健の運営の決まりをまとめた横浜市の手引きには、話し合う時期が次のように書かれています。
その検討は病状及び身体の状態に応じて適宜実施すべきものですが、少なくとも3月ごとに行います。
出典:横浜市「指定介護保険事業者のための運営の手引き 介護老人保健施設」(2022年6月・p.17)
特養は暮らしの場なので、家に帰る時期を決めて入る施設ではありません。
費用:どちらが安いかは、部屋の種類で入れ替わる
加算を除いた基本の金額で、要介護5・1割負担の1日分を比べると、下記のとおりです。

相部屋では老健、個室では特養のほうが、1日の合計が安くなります。
どちらの施設でも、介護の費用の自己負担に、部屋代・食費・日常生活費が加わります。
施設の型や加算、部屋の種類で金額が変わるので、候補の施設ごとに見積もりをもらって比べてください。
所得が少ない方は、部屋代と食費が軽くなる仕組みもあります。 老人ホーム全体の費用は、 【2026年最新】老人ホーム費用はトータルいくら?月額・一時金の相場と安く抑えるコツ3選 で解説しています。
医療:老健は、入所者100人に1人以上の医師を置く
特養の医師は、入所者の健康管理に「必要な数」と決まっていて、人数の目安はありません。
看護職員の数も、老健は看護・介護職員の7分の2程度、特養は入所者の数に応じて決まります。
病院から退院したばかりで医療の手当てが多い親なら、施設に医師と看護師の体制を聞いておくと安心です。
リハビリ:老健のリハビリは、少なくとも週2回程度
老健には、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が、入所者100人に1人以上います。
なお、機能訓練は入所者一人について、少なくとも週二回程度行うこと。
出典:厚生省(当時)通知「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準について.pdf)」(老企第44号 第四の15)
特養に置くのは、機能訓練指導員1人以上です。 特養では、入浴や食事などの暮らしの支援とあわせて、機能訓練を行います。
老健のリハビリでは、下記の動きを練習していました。

お風呂の出入りは、施設の浴室で、介護職員と一緒に、実際の入浴の場面で練習しました。立ち上がりや、浴槽をまたぐ動きです。
特養と老健、どちらが合うかは親の状態で決まる

親が家に帰れる見込みがあるかで、先に考える施設が変わります。
退院しても、すぐ家で暮らすのが不安なら老健
入院で体力が落ちても、リハビリで家に戻れる見込みがあるなら、まず老健を相談してください。 家の段差やトイレの心配を、老健にいる間に練習で減らせます。
家で介護を続けるのが難しくなってきたら特養
要介護3以上で、家で介護を続ける見通しが立たないなら、退院を待たずに特養への申し込みを考えてください。 特養は申し込んだ順ではなく、介護の必要の程度や家族の状況で、入る順番が決まります。
要介護1・2なら、特例とほかの施設を両方あたる
特養の特例の事情に当たるかは、ケアマネや市の窓口に相談してください。 あわせて、グループホームやサ高住など、ほかの施設とも比べておくと選びやすくなります。
施設の種類ごとの違いは、 【2026年最新】親の老人ホーム選びで後悔しない 施設6種類の比較から資料請求まで理学療法士18年が完全ガイド で解説しています。
有料老人ホームと特養で迷う方は、 【徹底比較】有料老人ホームと特養の違い5選 費用・サービス・選び方を理学療法士が解説 も参考にしてください。
老健で家に帰る前にしていた3つの準備

家に帰る準備の進め方は、老健ごとに違います。 入所したら、家族が加われる準備を、老健の相談員に聞いてください。

私が老健で関わった、家に帰れた方には、下記の3つの準備がありました。

自宅を見に行き、手すりや段差を確かめる
家族が立ち会えば、家のどこに気をつけるかを、職員から直接聞けます。

理学療法士の私と老健の相談員が、ご本人と一緒に家へ伺い、家族に立ち会ってもらいました。家で確かめたのは、下記の場所です。


確かめたあと、手すりを付けたり、福祉用具を入れたり、家具や物の置き場所を変えたりした家がありました。家は変えずに、老健のリハビリでその家の動きに合わせて練習した方もいました。
家族が介助のやり方を練習する
家に帰ったあと介助するのは家族なので、老健にいる間に練習しておきます。 練習の声がかかったら、できるだけ参加してください。

家族に介助のやり方を教えていたのは、理学療法士の私と介護職でした。教えていたのは、下記の介助です。

トイレでは、尿パッドの外し方と替え方を伝えました。ご本人ができること・できないことと、介助の注意点もあわせて伝えています。
外泊で試し、困ったことを退所までに職員と見直す
外泊は、家での暮らしを、退所の前に短く試す機会です。 家で困ったことは、遠慮せずに職員へ伝えてください。

外泊のあと、夜中のトイレで困ったと家族から聞いたことがあります。老健では介護職が夜の様子を見て、私と介護職から家族に、夜中のトイレの介助と見守りのやり方を伝えました。家族は、家でも介護できそうだと自信がついた様子でした。
老健から家に帰れないときは、特養などに移る道もある

家に帰れなくても、老健にいる間に次の行き先を選べます。
体の状態によっては、老健に長く入所する方もいる
3か月ごとの話し合いの結果で、入所が続くこともあります。 入所の期間の決め方は施設によって違うので、入所の前に聞いておいてください。出典:新宿区「介護保険住所地特例」

私が働いていた老健には、ご本人の体の状態が家で暮らすには難しく、数年にわたって入所していた方もいました。
別の施設へ移る方もいるので、次の施設を早めに探しはじめる
老健にいる間に次の施設の候補を見比べておくと、3か月ごとの話し合いで慌てずに済みます。 探し方は、老健の相談員かケアマネに相談できます。

老健から、別の施設へ移った方もいました。
老健に入っている間に、特養に申し込むこともできる
特養に申し込んでいる方の半分以上は、家ではなく、病院や施設などにいる方です。


申し込みの窓口や書類は市や施設で違うので、老健の相談員かケアマネに聞いてください。
特養と老健で違う、入所中の病院受診と薬

老健の医療と薬は、施設の中で対応するのが基本です。 横浜市の手引きには、薬の費用について次のように書かれています。
入所中に使用する「薬」の費用は、医療保険機関等の受診時に医療保険で対応できるもの等一部を除き介護報酬に含まれます。
出典:横浜市「指定介護保険事業者のための運営の手引き 介護老人保健施設」(2022年6月・p.33)
ほかの病院への通院は、施設の医師が必要と判断したときだけです。
横浜市の手引きでは、施設の医師の指示で通院するときは、原則として施設の職員が付き添うとしています。 入所前から飲んでいる薬や通院の付き添いをどうするかは、入所の前に施設に確かめてください。 家族の判断で、持病の病院などへ連れて行きたいときは、先に老健に相談してください。
特養では、ほかの病院を受診するときに誰が付き添うかを、入所の前に施設に聞いておくと安心です。
特養と老健でよくある質問

ショートステイの特養と老健は、何が違いますか?
- Qショートステイの特養と老健は、何が違いますか?
- A
特養などのショートステイは、日常生活の支援や機能訓練が中心です。老健などのショートステイでは、医療や看護、機能訓練も受けられます。どちらも、介護保険で続けて使えるのは30日までです。
胃ろうや在宅酸素があっても入れますか?
- Q胃ろうや在宅酸素があっても入れますか?
- A
受け入れられるかは、施設ごとに違います。見学や問い合わせのときに、今の処置を伝えて確かめてください。
介護医療院とは、何が違いますか?
- Q介護医療院とは、何が違いますか?
- A
介護医療院は、長く療養が必要な方が入る施設です。療養上の管理や看護、介護、医療を受けながら暮らします。
特養は、申し込めばすぐに入れますか?
- Q特養は、申し込めばすぐに入れますか?
- A
申し込んだ順ではなく、介護の必要の程度や家族の状況で、入る順番が決まります。待つ期間は地域や施設で違うので、申し込む特養に目安を聞いてください。
まとめ 特養と老健の違いは、家に帰る準備をするかどうか

最後に、この記事の要点です。
まずは病院の相談員に、親が家に帰れる見込みがあるかを聞いてみてください。

老健では、家に帰れた方にも、別の施設へ移った方にも関わりました。どちらの道も、家族が親の暮らしを考えて選んだ道です。

