看護職は、人々の健康と生活の質を支える重要な役割を担う専門職です。
主に看護師、准看護師、助産師、保健師の4つの職種があり、それぞれが特徴的な役割を果たしています。
これらの職種について、詳しく説明していきます。
看護師
看護師は、医療現場の最前線で患者さんのケアを行う専門職です。
役割と業務内容
看護師の主な役割は、患者さんの身体的・精神的なサポートを行うことです。
具体的な業務内容には以下のようなものがあります:
- バイタルサインのチェック(血圧、体温、脈拍、呼吸)
- 点滴や注射の実施
- 患者さんの観察と状態の記録
- 医師の診療補助
- 患者さんやご家族への説明や相談対応
看護師は、チーム医療の一員として他の医療専門職と連携しながら、専門的な知識と技術を活かして患者さんのケアにあたります。
資格取得の方法
看護師になるためには、以下のステップを踏む必要があります:
- 高校卒業後、3年制または4年制の看護学校に進学
- 看護師国家試験を受験し、合格する
看護師は国家資格であり、厚生労働大臣が認定します。
准看護師
准看護師は、看護師と似た役割を果たしますが、いくつかの違いがあります。
看護師との違い
- 准看護師は都道府県知事が認定する免許であり、国家資格ではありません
法的な位置づけ
准看護師と看護師の最も根本的な違いは、法的な位置づけにあります。
- 看護師は厚生労働大臣が発行する国家資格です。
- 准看護師は都道府県知事が発行する免許です。
この違いにより、准看護師には様々な制限が課せられています。
業務の自立性
准看護師の最大の制限は、業務の自立性に関するものです。
- 看護師は自己判断で看護業務を行うことができます。
- 准看護師は医師、歯科医師、または看護師の指示を受けてからでないと業務を行えません。
- 訪問看護などにおいて、准看護師は24時間体制のオンコールを行うことができません
例えば、患者さんから体位交換や入浴介助を頼まれた場合:
- 看護師はすぐに対応できます。
- 准看護師は必ず看護師や医師に報告し、指示を待つ必要があります。
この制限により、准看護師の業務効率は看護師に比べて低くなる傾向があります。
指示出しの権限
准看護師には、他の医療従事者への指示出しに関する制限もあります。
- 看護師は准看護師に指示を出すことができます。
- 准看護師は、たとえ経験が豊富でも、他の看護師や准看護師に指示を出すことはできません。
この制限は、新人看護師と経験豊富な准看護師が一緒に働く場合などに問題となることがあります。
看護計画の立案
看護計画の立案は、准看護師にはできない重要な業務の一つです。
- 看護師は患者さんの入院から退院までの看護計画を立案できます。
- 准看護師は看護計画の立案に携わることができません。
これは、准看護師養成課程でアセスメント能力や看護計画立案に関する教育が十分に行われていないことが理由です。
キャリアアップの制限
准看護師には、キャリアアップに関する制限もあります。
- 看護師は管理職への昇進が可能です。
- 准看護師は管理職になることができません。
そのため、准看護師として働き続ける限り、主に現場での業務が中心となります。
資格取得の方法
准看護師になるには、以下の方法があります:
- 高校卒業後、看護大学(4年制)、専門学校、または短期大学(3年制)に入学
- 都道府県別の准看護師試験を受験し、合格する。
看護師への道
准看護師から看護師になるためには、看護専門学校の2年課程を修了し、看護師国家試験に合格する必要があります。
ただし、この方法は高校卒業後に直接看護師を目指すよりも時間がかかることに注意が必要です。
助産師
助産師は、妊娠・出産に関する専門的なケアを提供する看護職です。
役割と業務内容
助産師の主な役割には以下のようなものがあります:
- 出産のサポート
- 妊娠中から出産後までの体調管理と生活指導
- 新生児の健康管理
資格取得の方法
助産師になるためには、まず看護師の資格を取得する必要があります。
その後、以下のいずれかの方法で助産師の資格を取得します:
- 看護大学(4年制)で看護師課程と助産師課程の両方を修了し、両方の国家試験に合格する
- 看護師の資格を取得後、短大・専門学校(1年)または大学院(2年)で助産師課程を修了し、助産師国家試験に合格する
保健師
保健師は、地域社会の健康課題に取り組む専門職です。
役割と業務内容
保健師の主な役割には以下のようなものがあります:
- 地域住民の健康相談への対応
- 生活指導の実施
- 健康増進と疾病予防の活動
- 少子高齢化、メンタルヘルス問題、生活習慣病などの現代的な健康課題への対応
保健師は、個人だけでなくコミュニティ全体の健康促進に向けて尽力します。
資格取得の方法
保健師になるためには、看護師の資格を取得した後、保健師養成課程を修了し、保健師国家試験に合格する必要があります。
看護職の共通点と違い
これら4つの看護職には、いくつかの共通点と違いがあります:
共通点
- 医療の知識と技術を用いて人々の健康を守る
- 患者さんや地域住民に寄り添いながら支援を行う
- 一度取得した資格は生涯有効
違い
職種 | 主な活動場所 | 特徴 |
---|---|---|
看護師 | 病院、クリニック | 幅広い医療ケアを提供 |
准看護師 | 病院、クリニック | 看護師の指示のもとで業務を行う |
助産師 | 産科病棟、助産院 | 妊娠・出産に特化したケアを提供 |
保健師 | 保健所、学校、企業 | 地域全体の健康増進に取り組む |
職種別の保有資格者の推移
看護職種の推移を以下の表にまとめました。
年 | 保健師 | 助産師 | 看護師 | 准看護師 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|
2010 | 45,028 | 27,789 | 952,723 | 368,148 | 1,393,688 |
2012 | 49,784 | 29,432 | 1,015,744 | 357,777 | 1,452,737 |
2014 | 53,365 | 33,707 | 1,086,779 | 348,967 | 1,522,818 |
2016 | 57,472 | 35,774 | 1,149,397 | 337,258 | 1,579,901 |
2018 | 61,640 | 36,911 | 1,218,606 | 304,479 | 1,621,636 |
2020 | 64,571 | 37,940 | 1,280,911 | 284,589 | 1,668,011 |
2022 | – | – | 1,300,000以上 | – | – |
この表から以下のような傾向が読み取れます:
- 看護師の数は継続的に増加しており、2022年には130万人を超えています。
- 保健師と助産師の数も緩やかに増加しています。
- 准看護師の数は減少傾向にあり、2010年から2020年の間に約8万4千人減少しています。
- 全体的な看護職の総数は増加傾向にあり、2020年には約167万人に達しています。
- 2020年から2022年にかけての看護師数の増加は約2万人で、増加のペースが若干鈍化している可能性があります。
なお、2025年問題に向けて、訪問看護ステーションや介護保険施設等での看護師の需要が特に高まると予想されています。
まとめ
看護職は、看護師、准看護師、助産師、保健師の4つの職種に大別されます。
それぞれが専門的な知識と技術を持ち、人々の健康と生活の質の向上に貢献しています。
看護師は医療現場の最前線で患者さんのケアを行い、准看護師は看護師の指示のもとで同様の業務を行います。
助産師は妊娠・出産に関する専門的なケアを提供し、保健師は地域全体の健康増進に取り組みます。
これらの職種は、それぞれ異なる役割を持ちながらも、人々の健康を守るという共通の目的のもとに活動しています。
看護職を目指す方は、自分の適性や興味に合わせて職種を選択し、必要な教育と訓練を受けることが大切です。また、継続的な学習と技術の向上に努めることで、より質の高い看護サービスを提供することができるでしょう。
看護職は、医療技術の進歩や社会のニーズの変化に応じて、常に進化し続ける職業です。
人々の健康と幸せを支える重要な役割を担う看護職は、やりがいと責任のある仕事であり、社会に大きく貢献できる職業といえるでしょう。
以上、参考になれば幸いです。