訪問看護ステーションのスタッフが夏場に直面する課題の一つに、「車内の高温状態」があります。
炎天下に駐車していた車は、わずか数分で車内温度が50℃を超えることも珍しくありません。そんな状態で移動を開始すると、スタッフ自身の体調にも悪影響が出かねません。
本記事では、冷房に頼り切るのではなく、「車内の空気を入れ替える」という基本かつ効果的な手段に注目し、訪問前後に安全で快適に車を利用するための具体的な温度対策を紹介します。
1. 車内が異常に暑くなるメカニズムとは?
なぜ車内はここまで暑くなるのか?
車のガラスは温室効果を引き起こしやすく、日光に含まれる赤外線が車内に入り込み、熱をため込みます。
車内のシートやダッシュボードが熱を吸収し、赤外線として再放出された熱は窓から逃げられず、どんどん蓄積されるのです。
訪問時間が30〜60分であることが多いため、車内の温度が限度なく上昇していきます。
実際の温度変化(参考値)
経過時間 | 外気温(35℃) | 車内温度 |
---|---|---|
0分 | 35℃ | 35℃ |
10分 | 35℃ | 約43℃ |
30分 | 35℃ | 約52℃ |
60分 | 35℃ | 約60℃超 |
※これは直射日光下に駐車した場合の例です。

2. 冷房だけに頼る危険性と限界
車に乗り込んだ直後、多くの方はエンジンをかけてすぐに「冷房を最強にする」という方法をとります。しかし、これは一時的な涼しさを生み出す一方で、以下のような問題もあります。
- エアコンが効き始めるまでに時間がかかる(車内が熱すぎると冷風がぬるく感じる)
- 車内の空気がこもり、息苦しくなることも
- 冷風の直撃で体調不良(冷房病)を招く恐れ
そこで重要なのが、「冷房前にしっかり空気を入れ替える」ことです。
3. 快適な車内環境を作る!空気の入れ替えテクニック3選
テクニック①:すべてのドアを一気に開けて換気する
やり方:
- 車に乗る前に、運転席・助手席・後部座席すべてのドアを全開にする
- 30秒〜1分程度、風が通るように放置する
効果:
- 短時間で車内の熱気を効率的に外に逃がせる
- こもった空気が一掃され、体感温度も大幅に下がる
注意点:
- 路上駐車などではドアを長時間開けすぎないよう注意
- 周囲の安全確認を徹底
- 時間がかかる。
テクニック②:助手席の窓を開け、運転席のドアを開閉する(エアポンピング)
やり方:
- 助手席側の窓を全開にする
- 運転席側のドアを5〜10回ほど勢いよく開け閉めする
効果:
- ポンプのように空気を外に押し出し、熱気を短時間で外へ排出
- 周囲に迷惑をかけずに換気可能
ポイント:
- 車に乗り込む前にできる対策として実用的
- 車通りの多い場所でも活用できる
テクニック③:窓を少し開けた状態で走行(低速走行時)
やり方:
- 走行開始後すぐに、すべての窓を5〜10cm程度開けて運転する
- 冷房はOFFまたは送風モードにする
- 2〜3分後にすべての窓を閉め、冷房ONに切り替える
効果:
- 走行風で効率よく熱を外に逃がす
- エアコンの効きが格段に良くなる
4. 知っておきたい:冷房と換気のベストバランス
空気を入れ替えてから冷房を使う流れ(おすすめ順)
- ドア・窓を開けて空気を一掃
- 走行中は窓を少し開けて走る(2〜3分)
- 冷房を適切な温度でON(設定温度25〜26℃推奨)
- 内気循環モードに切り替えて効率化
この流れを徹底すれば、車内が急激に冷えて結露や体調不良のリスクも軽減できます。
5. その他の暑さ対策グッズも併用しよう
車内温度を少しでも上げない工夫も大切です。以下のグッズはおすすめです。
下記のブログでも紹介しています。
- サンシェード(日除け):ダッシュボードやハンドルの高温化を防ぐ
- シートカバー:熱吸収の少ない素材にすることで、乗り始めの「熱っ!」を軽減
- 小型扇風機:USB式などの車内用で、送風をプラス
6. 訪問看護スタッフならではの視点で注意したいこと
訪問スケジュールが詰まっている日こそ、「つい冷房を強くしてごまかす」ようになりがちですが、体調を崩してしまっては本末転倒です。
注意点
- 冷えすぎた車内から炎天下への急な移動は、ヒートショックや脱水の原因になる
- 訪問先に着く直前は、冷房を弱め、体を外気に慣らす時間を確保
- ペットボトルの水分を常に持ち歩き、こまめな水分補給を心がける
7. まとめ:一番大切なのは「快適に、安全に」訪問を続けること
夏の車内は命の危険すらある高温環境になりますが、適切な「空気の入れ替え」と冷房のバランスを意識することで、安全かつ快適な訪問活動が可能です。
冷房を最大にする前に、ドアや窓を使って空気を入れ替える。
たったこれだけの工夫で、暑さに負けない現場環境を手に入れることができます。

最後に
訪問看護の仕事は、移動も含めて非常に重要なケアの一部です。スタッフ一人ひとりが健康でいることが、患者さんの安心にもつながります。
今年の夏は「車内温度対策」にもう一歩踏み込んでみませんか?