親の介護は、同居・別居を問わず、人生の後半において避けては通れない極めて重要な問題です。
「育ててくれた恩を返したい」という温かい想いがある一方で、現実はきれいごとだけでは済まない側面があります。

親にも自分にも、介護に充てるお金がない

仕事や育児、義理の両親の世話で、自分の心身がもう限界

一人っ子で相談できる兄弟がおらず、職場の理解も得にくい
一人で重い責任を背負い込み、「これ以上どうすればいいのか」と出口の見えない不安を感じている方も少なくありません。
特に相談できる兄弟がいない一人っ子の方にとって、その孤独感は計り知れません。
本記事では、10年以上の訪問看護ステーションでの勤務経験があり、理学療法士として18年、介護支援専門員(ケアマネージャー)の資格をもつ私が、一人っ子だからこそ知っておきたい「介護の不安」を感じる7つの問題と、今すぐ知っておくべき解決策をお金がない観点からまとめました。

親との関係性が良い場合の「意思疎通と準備」はもちろん、関係性が悪い場合に知っておきたい「法律上の最低限の義務」や、生活保護などの公的サービス、民間のサービスについて紹介します。
介護は「頑張り」で解決するものではなく、「仕組み」で解決することも大事な視点です。
この記事が少しでも参考にしていただければ、幸いです。
一人っ子が介護負担を感じた瞬間に立ち会った経験


臨床で遭遇した介護負担を感じる一人っ子のエピソードを紹介します。
ステロイド減薬に伴う「倦怠感」と「排泄トラブル」
全身性エリテマトーデスの治療において、ステロイドの服薬は症状を抑える一方で副作用も強く、状態が安定すれば慎重に減薬していく必要があります。
しかし、この「減薬」の過程で生じる強烈な全身倦怠感が、在宅生活に影響を与え始めました。
訪問する際も、日中に横になる時間が目に見えて増え、自立していたトイレ動作も、間に合わないなどのトラブルが増えていきました。
リハビリ職種として動作訓練や環境調整を行っていましたが、病状に起因する体力の低下が著しく、ご本人の自信喪失にもつながっていました。
介護者である娘様の「見えない負担」
この家庭を支えているのは、パソコンで在宅勤務をされている一人っ子の娘様です。
娘様は月に数回の出社以外は自宅で仕事をされていますが、「在宅勤務=介護ができる」というわけではありません。
- 平日の通院(ステロイド調整のため月1回)のたびに有給休暇を取得。
- 勤務中も休憩時間を削り、母親の介助やトイレ対応に追われる。
- 病状が進行し、通院頻度が増えることでさらに休暇を消化せざるを得ない。
リハビリの合間にお話しを伺う中で、娘様の表情に次第に余裕がなくなっていくのが分かりました。
「共倒れ」を防ぐための転換期
娘様ご自身も心身の不調をきたし、痛み止めを服用しながら仕事をこなすという限界の状態に達しました。
在宅生活を維持するため、介護保険のサービスを増やして対応しています。
しかし、娘様の疲弊は深刻であり、以下の選択肢を視野にいれることになりました。
- ショートステイの定期利用(娘様の休息確保)
- 施設への入居検討(身体機能のさらなる低下を見据えて)
専門職としての視点
リハビリ職種として、身体機能の維持だけでなく、「家族介護の継続可能性」を見極めることの重要性を痛感しました。
どれほどご本人が「娘と一緒にいたい」と願い、娘様が「家でみてあげたい」と思っていたとしても、介護負担の増加がそれを許さない瞬間が訪れます。

在宅での介護において、頑張るだけでは継続性も乏しく、利用者様、ご家族様とも身体的、精神的な負担が生じてしまう危険性を感じる経験となりました。
一人っ子が親の介護を行う際に問題になる7つの理由

7つの問題点は以下になります。
精神的なプレッシャー

親の介護をするのは子供である自分が行わなけらばならないとの儒教の「孝」の考え方があります。
日本の介護の実践において、家族中心の義務感として強く現れています。親の志を尊重し、身体を守る行為が日常的な介護の基盤となり、江戸時代から定着しています。戦前までは「家族介護神話」が続き、施設利用より在宅介護が優先されました。
1947年の日本国憲法と民法改正で家制度が解体され、個別核家族化が進みました。
高度成長期以降、生活保護法や介護保険(2000年)導入により、公的サービスが拡大し、家族介護負担は軽減されましたが、孝の精神は精神的責任として続いています。
孝の精神的責任とは、親への物理的な世話だけでなく、内面的な敬愛、感謝、親の意志尊重を生涯にわたる義務として課すものです。介護は単なる労働から道徳的実践へ昇華されており、家族を介護しない罪悪感の原因となります。
お金が無い中であれば自分自身がしなければならないという意識が一層強くなります。
解決策:介護の定義を「労働」から「マネジメント」へ書き換える】
- 「孝」の新しい解釈:儒教的な「孝」は、子が自らの手で世話し、自己犠牲を払うことだけではありません。「親が安全で尊厳ある生活を送れる環境を整えること」も立派な親孝行です。経済的な負担も立派な親孝行になります。
- プロへの委ねる勇気:専門家に介護を任せることは「見捨てた」のではなく、「最高のケアをプレゼントした」と捉え直す。
- 「罪悪感」の分離:老人ホームへの入居で感じる罪悪感は、親への愛情がある証拠です。その感情は否定せず、「自分が倒れたら親も共倒れになる」というリスク管理の視点を持ちましょう。
両者が幸せに過ごすことが目的であって、老人ホームの利用は手段でしかありません。

経済的な負担

親が年金の収入を中心に生活できていたとしても、今までの生活費とは別に追加で、介護費用がかかります。
親の収入や貯蓄があれば問題にはなりませんが、親のお金がないことで金銭的な援助が必要になります。
いつまで金銭的な援助が必要なのかが不透明であること、親が年を重ねていくとさらに治療費が必要となります。
【解決策:親の資産の徹底把握と公的制度の活用】
- 「親のお金」で解決する:原則として、介護費用は親の年金や貯蓄で賄うのが鉄則です。親との関係性が良い場合には事前に話し合い資産状況を確認しましょう。親の資産が不明な場合は、成年後見制度の利用を検討しましょう。
- 高額療養費・高額介護サービス費制度:医療費や介護保険の自己負担額には月ごとの上限があります。世帯を分けて「世帯分離」をすることで、負担額を抑えられるケースもあります。
同じ家に住みながら、住民票上の世帯を2つ以上に分けること
| 世帯分離 | メリット(得すること) | デメリット(損すること) |
| 介護・福祉 | 介護保険の自己負担限度額が下がる可能性がある。 | 特になし。 |
| 保険料 | 国民健康保険料が安くなる場合がある。 | 世帯ごとに「平等割」がかかり、総額が増える場合がある。 |
| 住民税 | 「住民税非課税世帯」になり、給付金などの対象になりやすい。 | 職場の「家族手当(扶養手当)」がもらえなくなる可能性がある。 |
相談相手の不在


家の中が尿や便で汚れてしまい片付けることが辛い

認知症の症状がでており、徘徊やお湯を沸かしたまま空焚きをするようになった。どうしよう…。
親の介護で日々生じる問題がでてきた時に相談する相手がいません。
職場には心理的に相談しにくい内容であることも多く、親戚も同様です。
精神的なストレスは仕事や日常生活に悪影響を及ぼし、結果として職場での居心地が悪くなり、社会的な孤立を招きます。
【解決策:プロの伴走者と「利害関係のない」コミュニティの確保】
- 地域包括支援センターに相談する:一人っ子にとって、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターの職員に些細な愚痴や不安も包み隠さず共有しましょう。
- オンライン・当事者の会:職場や親戚に言えない悩みは、SNSや「一人っ子介護の会」などのオンラインコミュニティで吐き出しましょう。
- カウンセリングの利用:精神的に追い詰められる前に、臨床心理士などの専門家に相談することも大切です。
身体的な負担

同居している場合や近くで住んでいる場合には直接介護をすることもあります。慣れない親の介護であり、今までは助けられる存在だった親を介護をしなければなりません。
立場の変化や今まで大きな病気や怪我をしてこなかった親の場合には、特に介護することに戸惑うこともあります。特に認知症の症状、トイレを汚すことについて負担を感じやすいです。
体に無理をして燃え尽き症候群になると、回復にも時間が必要です。
介護負担が長期的に蓄積し、情緒的・身体的・精神的に極度に疲弊した状態を指します。特に家族介護者で多く見られ、熱心に取り組む人ほど発症しやすい。
【解決策:セルフケアの優先と「非接触介護」の導入】
- 直接介護を最小限に:肉体的・精神的負担が大きいものは訪問介護やデイサービスなどのプロに任せましょう。
- 福祉用具のフル活用:介護保険で安価にレンタルや購入が可能です。
- レスパイトケア(休息):ショートステイ(短期入所)を定期的に利用し、親と離れて「自分自身の時間」を意図的にに作りましょう。
時間の制約(就労と子育ての両立)

一人っ子が就労している場合や幼い子どもの子育てをしている場合にはより時間の使い方が難しくなります。
親の介護が必要となる子供世代の内訳は、30代以下が約1割、40代・50代が約4割、60代以上が約半数です。(参照元:介護が必要になる子供世代の年齢分布)
親の高齢化と子世代の就労世代が重なる「ダブルケア」問題を反映しています。
厚生労働省の「人口動態統計」では、2024年の最新確定数(2025年6月公表)では、初婚平均年齢が男性31.1歳、女性29.7歳で、全国的に上昇傾向が続いています。
子供世代が子育てを行っている場合には、40代・50代はまだまだ手のかかかる10代前後の子育て中でもあり、育児にも時間が必要です。また、教育費としてお金がかかるため、子供世代は子育てに時間を確保しつつ、教育資金を仕事で稼ぐ必要もあります。
【解決策:職場への早期開示と「ダブルケア」の公的統合相談】
- 職場へのカミングアウト:「一人っ子なので、急な対応が必要になる可能性がある」と上司や人事へ事前に伝え、テレワークや時差出勤、介護休暇などの制度を確認しておきます。
- 家事代行の外注:介護に時間が取られる分、自身の家庭の掃除や料理を家事代行(に頼り、時間を「買う」意識を持ちましょう。
すぐに駆けつけないといけない

病院などの医療機関や介護サービスの利用中に、親の状態が悪化した場合にはすぐ電話がかかってきます。親との同居や別居に関わらず、移動のための時間、仕事中に対応が必要となります。
いつ電話がかかってくるかもしれないと考えるだけでも、精神的な負担も感じてしまいます。
【解決策:テクノロジーによる見守りと地域ネットワークの構築】
- 見守りデバイスの導入:ネットワークカメラ、ポットの利用通知など、遠隔で異変に気付ける仕組みを作ります。
- 緊急通報サービスは、安価に利用でき、既存の固定電話に装置を取り付け、24時間対応のコールセンターにボタン一つで通報できるサービスです。主に1人暮らしの高齢者向けです。救急車の手配や緊急連作先にもコールセンターから架電できます。
情報の不足

生活保護や介護費用の貸付制度や介護保険サービスに関する公的なサービス、家事代行サービスなどのサービスに関する情報がありません。突然介護が必要になり、情報収集をする余裕もなく、介護に当たるためです。
【解決策:最初の一歩を「地域包括支援センター」に固定する】
- 「何を知らないか」をプロに聞く:自分で検索して調べる余裕がない時は、地域包括支援センターへ行き、「何から手をつけていいか分からない」と正直に伝えてください。
- ハンドブックの入手:多くの自治体で「介護のしおり」のようなガイドブックを配布しています。
東京千代田区の場合:高齢者サービスのしおり - 介護保険以外のサービスの利用:事前に情報を知っておくことで判断が円滑にでき、心の余裕にもつながります。
そもそも親の介護は誰がするものか?

親の介護は義務になるのか?
- 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
- 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
- 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。
民法877条では、直系血族(親子)と兄弟姉妹は互いに扶養義務があると定められています。扶養義務とは身体的な介護のほか、生活に必要なお金の支援も含まれるのが通常です。
また、兄弟姉妹間にも扶養義務がありますが、法律上で扶養義務の順序は定められていません。たとえば、長男に特別な義務があるわけではなく、扶養義務者が複数いる場合は、当事者同士で協議して決めることになります。
特別な事情がある場合は家庭裁判所の判断によって、直系血族および兄弟姉妹以外の3親等内の親族も扶養義務の対象になり得ます。
親の扶養義務は「経済的な支援」が原則とされているので、必ずしも子どもが直接的な介護をする必要はありません。
まずは親自身の年金や資産で介護費用を賄うのが基本です。子どもが自分の生活を破綻させてまで全額を負担する法的な義務はありません。
親の資産で足りない場合に、無理のない範囲で援助を検討しましょう。どうしても費用が捻出できない場合は、生活保護の申請も選択肢となります。
ただし、経済的余裕があるにもかかわらず扶養義務を果たさない場合には、罪に問われる可能性があります。
親の介護をしない場合は?
親の介護を放棄すると「保護責任者遺棄罪」に問われる可能性があります。
保護責任者遺棄罪には、3カ月以上15年以下の懲役刑が科されます。さらに、介護放棄により親が死亡した場合は、より重い罪に問われる可能性もあるため注意が必要です。
ただし、扶養義務に関しては、介護者の経済状況も考慮されます。介護者が経済的に困っている場合など、すべての状況において法的な責任が問われるわけではありません。
扶養義務には、同居や引き取りによる直接的な義務と、経済的に扶養する義務の2種類があり、どちらか一方を果たせば問題がありません。
親を介護するための時間が確保できなかったり、心身の負担が大きいと感じたりしている場合は、介護施設、老人ホームへの入所も検討してみてください。
施設の入所費用を負担するだけでも扶養義務を果たせるほか、専門的なケアによって介護の負担を軽減できます。
扶養義務免除の判断は、家庭裁判所が行います。
判断基準は、生活保護制度における「生活扶助(せいかつふじょ)基準額」が用いられるのが一般的です。
生活扶助(せいかつふじょ)は、生活保護制度の主要な扶助の一つで、食費、光熱費、消耗品などの日常的な生活費を賄うための基準額が定められています。この基準額は、年齢、世帯人数、居住地域(級地)によって異なり、最低生活費の一部として計算されます。
地域・世帯別の目安
| 世帯例 | 地域例 | 生活扶助基準額(特例加算込、月額) |
| 単身(20-40歳) | 東京23区(1級地-1) | 約76,000円 |
| 単身(20-40歳) | 大阪市 | 約76,310円 |
実際の支給額は収入控除後の最低生活費との差額となり、詳細は居住地の福祉事務所で確認が必要です。
引用元:生活保護費について
なぜ親の介護について対応すべきなのか?
どうしても対応できない場合にはネグレクトを疑われることや孤独死の危険性も高くなってしまいます。介護をする前に適切な知識や情報を学んでおくことで、対応が必要になってから慌てなくて済みます。
ネグレクトを疑われてしまう
ネグレクト(介護放棄)
厚生労働省の基準では、「意図的か結果的かを問わず、介護や生活の世話の提供を放棄または放任し、高齢者の生活環境や身体・精神的状態を悪化させる状態」と定義します。
これには入浴・食事・清掃の怠りなどが含まれ、身体的虐待や心理的虐待と並ぶ虐待の主要類型です。
2024年度(令和6年度)の厚生労働省調査では、介護施設・事業所職員による高齢者虐待の判断件数が過去最多の1220件(前年度比8.6%増)となり、相談・通報件数は3633件に上りました。
ネグレクトを含むこれらの事例は、人材不足や介護負担増が背景にあり、死亡事例も複数確認されています。養護者(家族等)による虐待判断件数も1万7133件で、認知症症状(58.1%)や介護ストレス(57.2%)が主な要因です。
孤独死の危険性がある
孤独死
厚生労働省では「誰にも看取られることなく亡くなったあとに発見される死」とされ、内閣府の高齢社会白書でも同様に「相当期間放置されるような悲惨な孤立死(孤独死)」と表現されます。
参照元:総務省のリンク
ニッセイ基礎研究所の2011年推計で年間約2.7万件とされ、現在は3万件超と増加傾向です。厚生労働省の関連施策では、高齢単身世帯の増加に伴い、死後平均18日で発見されるケースが多く、2025年時点で超高齢化による社会問題化が進んでいます。

実務の中で遭遇した孤独死の事例を紹介します。
70代の母親は、一人暮らしをしながらも身の回りのことはすべて自分で行い、一見「自立」した生活を送っていました。しかし、持病の糖尿病をコントロールするためのインスリン注射において、少しずつ「用量を間違える」という異変が生じ始めていました。
低血糖は、重症化すれば意識消失を招き、命に関わります。
脳はほぼブドウ糖だけをエネルギー源としているため、強い低血糖状態が続くと、酸素不足と似た状態となり、数十分で不可逆的な脳障害や死亡に至ることがあります。
参考資料:https://dm-net.co.jp/calendar/2019/029587.php
ある日、連絡が取れないことを心配した娘さんが自宅を訪ねると、母親は電話を手にしたまま亡くなっていました。最期の瞬間まで、誰かに助けを求めようと必死に電話へ手を伸ばしたのでしょう。その心中を思うと、言葉になりません。
当時、ご家族は介護保険の相談を始めていたところでした。しかし、制度の枠組みが決まり、実際のサービスが始まるまでには時間がかかります。「まだ自立しているから」「娘が時々見ているから」という判断が、結果として誰の目も届かない空白の時間を作ってしまいました。

介護保険の認定を待たずとも、配食サービスなどの民間サービスなど、すぐに始められる「外との繋がり」を一つでも作っておくことが大切さを教えてくれます。
実際に親の介護をしようとすると経済的な負担はどのくらいになるのか?

費用について
在宅介護と施設介護の費用を比較すると、月々の負担額には約7.4万円の差があります。
具体的な内訳は以下の通りです。
月々の費用の差
介護を行った場所別の月額平均費用(公的介護保険サービスの自己負担額を含む)は、施設介護が在宅介護の約2.5倍となっています。
•在宅介護:月額平均4.8万円
•施設介護:月額平均12.2万円
•その差:月額7.4万円
費用の傾向と背景
- 施設介護が高い理由
施設介護(民間の有料老人ホームや公的な介護老人福祉施設など)は、在宅介護に比べて月々の支払いが高くなります。
- 要介護度の影響
どちらの場所で介護を行う場合も、要介護度が高くなるほど費用が増加します。例えば、全体の月額平均で見ると、要介護1では6.6万円ですが、要介護5では10.6万円まで上昇します。
- 一時費用の存在
月々の費用とは別に、介護開始時には住宅改修や介護用ベッドの購入などの一時的な費用が発生します。この初期費用の平均は74万円ですが、これも要介護5では107万円に達するなど、状態が重いほど負担が大きくなります。
在宅介護と施設介護の費用の違いは、「自炊中心の生活(在宅)」と「フルサービスのホテル暮らし(施設)」の費用の差に似ています。
在宅は工夫次第で出費を抑えられますが、施設は専門的なケアや居住環境がセットになっている分、月々の固定費が底上げされるという構造です。
このように、月々の固定費だけで見れば在宅介護の方が年間で約88.8万円(7.4万円×12カ月)ほど負担を抑えられる計算になります。
ただし、在宅の場合は住宅改修費などの初期費用や、家族による介護負担(時間や労力)も考慮に入れる必要があります。
公益財団法人:生命保険文化センター資料

在宅だから安くても良いとは限りません。
一人っ子であれば、時間や労力、経済的な負担も1人で抱えることが増えしまうため、注意が必要です。
お金の負担はかかりますが、全て自分で全て担って、自分自身が体調を崩すと介護ができない、仕事もできなくなる恐れがあります。
短期間だけ民間のサービスを利用することも視野にいれることも大切になります。
親と同居している場合には、原則介護保険のヘルパーさんによる生活援助サービスができません。
生活援助サービスとは、掃除・洗濯・調理・買い物代行など「日常生活を維持するための家事」を行うサービスです。
このようなケースではお金で解決できる自費サービスも選択肢に入れる、短期間だけでも利用してみることをオススメします。
介護する期間、場所について
介護全般にかかる期間と、介護の状態(要介護度)に応じた場所の変化から、以下の対比が浮かび上がります。
介護期間の実態(平均と分布)
介護が始まってから終わるまでの(または現在継続中の)平均介護期間は61.1カ月(5年1カ月)です。個人差が大きいのが特徴です。
- 4〜10年未満:31.5%(最も多い層)
- 10年以上:17.6%(約6回に1回の割合で長期化する)
- 2〜3年未満(12.3%)や3〜4年未満(15.1%)といった層も一定数存在
介護する場所の実態
| 項目 | 在宅介護 | 施設介護 |
| 主な選択時期 | 介護の初期 | 要介護度が高くなった時期 |
| 全体比率 | 56.8% | 41.7% |
| 期間の傾向 | 比較的軽度な状態での継続が多い | 重度(要介護4以上)での利用期間が長くなる傾向 |
介護の期間が経過し、要介護度が変化するにつれて、介護を行う場所が「在宅」から「施設」へとシフトしていく傾向があります。
介護する期間の現実と予測のギャップ
人々が「これくらいかかるだろう」と予測する期間と、実際の実績値には大きな差があります。
- 予測される必要期間:平均181.2カ月(15年1カ月)
- 実際にかかっている期間:平均61.1カ月(5年1カ月)
実際の約3倍近い介護の期間を想定して備えようとする傾向にありますが、現実の平均は約5年となっています。
経済的に厳しい場合には、一人っ子がすべての役割を担うことでお金の面を浮かすことは可能です。
介護期間の予測と現実のギャップもあることから、短期間での民間サービスの利用や老人ホームなどの施設の利用も検討することで一人っ子が抱える負担を減らすことも可能です。
公益財団法人:生命保険文化センター資料
施設での介護を考える人に向けて
施設の費用について相場は以下になります。
- 入居一時金(入居時):0〜100万円前後
- 月額利用料金(入居後):15万円前後
入居一時金、月額利用料金以外にも必要な料金もあります。

老人ホームの短期間の利用により、再び在宅生活を送ることができるようになったエピソードを紹介します。
壮絶なダブルケアと介護離職を経験しながらも、多職種との連携により再び母子での在宅生活を再建された70代女性の事例です。
同居されていたご両親が相次いで脳梗塞、骨折のために入院されました。一人っ子である息子様は教員として働かれていました。
両親の入院対応に奔走されました。残念ながら父親は他界されましたが、母親はリハビリを経て自宅へ退院することとなりました。
しかし、退院後の生活は想像を絶するものでした。頻繁な通院や日常生活の介助に追われ、息子様は有給休暇や介護休暇を使い果たしました。次第に欠勤が増え、「職場に多大な迷惑をかけている」という強い自責の念から、ついに息子様は長年勤めた教職を退職(介護離職)する決断をされました。
離職後、息子様は24時間体制で介護にあたりましたが、母親の状態が不安定なこともあり、息子様ご自身も心身の限界を迎えました。
リハビリの訪問時にも、息子様の表情からは生気が消え、共倒れの危機が目前に迫っていました。
ケアマネジャーら支援チームと協議し、「体制を立て直すための期間」として、母親に短い期間だけ老人ホームへ入居していただくことになりました。
物理的に距離を置いたことで、息子様はようやく休息をとることができ、驚くほど短期間で心身の健康を回復されました。
その結果、気力を取り戻した息子様は無事に介護職に再就職を果たし、再び自立した生活基盤を築くことができたのです。
息子様の体調の回復、再就職もできたことから、母親は施設から自宅へ戻られ、再び訪問リハビリを含む介護保険サービスを導入することになりました。

この事例から学んだのは、「施設入所は決して諦めではなく、在宅生活を継続するための戦略的休息である」ということです。 介護者が仕事を辞め、自分を犠牲にするだけでは、在宅生活は破綻してしまいます。

老人ホームを探す場合には老人ホーム検索サイト『みんなの介護』が便利です。
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- 月間訪問者数:330万人
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- 生活保護の条件で検索可能
- 地域、運営会社、ランキング、相場、空室、値段帯からの検索が可能であり、該当地域の相場も表示画面に同時に表示されるので地域による相場の違いを簡単に確認できる。
公的制度の11つの活用

介護保険を活用する

介護保険の申請方法をまとめます。
- 相談・申請
地域包括支援センターもしくは市区町村の介護保険窓口に相談し、申請する - 認定調査(訪問調査)
市区町村の認定調査員が自宅や施設を訪問し、心身の状態を聞き取り調査する。かかりつけ医が医学的な状態を記載した主治医意見書を市区町村へ送付。 - 認定手続
認定調査結果と主治医意見書をもとにコンピュータで一次判定。介護認定審査会にて医師等を含む専門家が総合的に判定する。 - 認定結果の通知
「非該当・要支援1・2・要介護1〜5」のいずれかが記載された結果通知と被保険者証が自宅に届く。 - ケアプランの作成
要支援なら地域包括支援センター、要介護なら居宅介護支援事業所のケアマネがケアプランを作成。 - 介護サービス利用開始
ケアプランに沿って事業所と契約し、サービスの利用を開始。
生活保護の制度について
生活保護の申請は全国共通の基準に基づき、世帯収入が最低生活費を下回る場合に可能です。最低生活費は地域区分(1級地都市部から3級地へ)と世帯構成で決まり、単身者で月10〜14万円程度が目安です。
申請の目安は以下の条件を満たす場合に申請可能です。
- 収入(給与・年金など)が最低生活費未満で、他の公的制度(年金・失業保険)を活用済み。
- 資産(預貯金・不動産)が生活保護基準(単身33万円程度)を下回るか、活用不能。
- 扶養義務者(親族)からの援助が得られず、働ける場合は求職活動中。
申請方法は居住地の市区町村福祉事務所(生活保護担当窓口)で申請します。
介護休業の利用
介護休業は、家族の介護のために最長93日まで仕事を休める制度で、育児・介護休業法という法律で決められている労働者の権利です。
介護休暇の利用
家族の通院付き添いや手続きなど「短時間・短期間の介護の用事」のために、1日または時間単位で取れるお休みの制度です。
仕事と介護を両立するための“スポットで使える”仕組みと考えると理解しやすくなります。
対象家族が1人なら「年5日まで」2人以上なら「年10日まで」年度ごとにリセットされ、状況が続く限り毎年使える
厚生労働省の介護休暇に関するリンク
相談窓口の利用
地域包括支援センターには、高齢者や家族が「介護のことで困ったときに相談できる窓口」が設けられており、介護・医療・福祉などをまとめて相談できる総合的な役割を担っています。

検索する場合には、【地域名+地域包括センター】と検索すると電話連絡先が探しやすいです。
厚生労働省ホームページより、地域包括支援センターについて
成年後見制度
認知症や障害で判断能力が不十分な成人の財産・権利を守るための公的制度です。
判断能力の低下した人が、悪質商法や不適切な契約から保護され、預貯金管理や介護契約などを適切に進められるように支援する目的です。
老人福祉員への相談
市長から委嘱されており,主にひとり暮らしの高齢者を訪問し,安否確認や話し相手となること等により,地域の高齢者を見守ります。
- 定期的な各戸訪問による健康・生活状況の確認。
- 相談対応や必要時の行政・医療機関への橋渡し。
- 地域行事への参加を通じた高齢者の孤立防止。
相談の連絡先は、市区町村の福祉担当窓口(保健福祉センターなど)です。
生活福祉資金貸付制度の利用
生活福祉資金貸付制度は、低所得者・障害者・高齢者世帯が生活再建や福祉目的で低利・無利子で資金を借りられる公的貸付制度です。社会福祉協議会が窓口となり、急な出費や生活安定のための支援を提供します。
| 資金の種類 | 主な用途 | 限度額の目安 | 利率・返済 |
| 総合支援資金(生活支援費) | 生活再建までの生活費 | 単身月15万円以内(最長12か月) | 無利子(保証人あり)または年1.5%(保証人なし)、据置6か月後10年以内 |
| 緊急小口資金 | 緊急の一時金(失業・病気など) | 10万円以内 | 無利子、据置2か月後12か月以内 |
| 福祉資金(福祉費) | 医療・介護・住宅改修・生業資金など | 580万円以内(用途別上限あり) | 無利子または年1.5%、据置6か月後20年以内 |
| 不動産担保型生活資金 | 高齢者世帯の生活資金(不動産担保) | 土地評価額の70%程度(月30万円以内) | 年3%以下、死亡時または限度額まで |
高額療養費制度について
高額療養費制度は、1か月の医療費自己負担額が所得に応じた上限を超えた場合に、その超過分を健康保険から払い戻す仕組みです。
特に高額になりやすい医療費を、家計破綻から守るためのセーフティネットとして機能します。
高額介護サービス費について
高額介護サービス費制度は、1か月の介護保険サービス利用料の自己負担額が所得に応じた上限を超えた場合に、超過分を市区町村から払い戻す仕組みです。
居住費・食費の利用者負担(負担限度額)について
介護保険施設(特別養護老人ホームなど)を利用する際の居住費・食費は原則全額自己負担ですが、低所得者向けに負担限度額認定制度があり、上限額が設定されて負担が軽減されます。
お金がなくても、親の介護をする上でしっておきたいサービス3選

家事代行
家事代行サービスとして人気のある ミニメイド・ピナイ(Pinay)・イチロウ(Ichirou) の3社を比較しています。
それぞれのサービス内容、料金、対応エリア、特徴などを整理していますので、ご自身やご家族に合ったサービスを見つける参考にしてください。
| サービス名 | 対応エリア | 時間単価目安 | 最低利用時間 | 主なサービス内容 | 特徴・強み | 注意点 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ミニメイド・サービス | 東京・神奈川・千葉・埼玉中心 | 要問合せ(定期利用中心) | 60日以上の定期利用 | 掃除全般 | 継続率96%、日本初の家事代行、教育研修が徹底 | スポット利用不可、エリア限定 |
| 【ピナイ家政婦サービス】 | 東京23区・神奈川一部 | 定期4,070円~/時スポット1,650円~/時 | プランによる | 掃除全般 | 単発利用OK、料金が明瞭、プラン豊富 | エリア限定、定期利用は割高 |
| 介護サービス【イチロウ】 | 東京・神奈川・千葉・埼玉・愛知・大阪・京都など | 関東2,900円/時+交通費600円愛知2,800円/時+交通費500円 | 2時間~ | 掃除全般通院付き添い・介助など | 家事+介護+通院支援、24時間対応 | 保険外のため自己負担、地域差あり |
もっともオススメできるのは、家事全般だけでなく、身体介護や通院支援まで幅広く対応できる介護サービス【イチロウ】です。

子供が同居している場合に生活援助を利用せずに、民間サービスを活用したケースを紹介します。
80代の父親と2人暮らしの娘様。
娘様は在宅勤務でしたが、月に1〜2度は隣接する県外の職場までの出勤が必要でした。父親はデイサービスを利用されていますが、娘様が会社に出勤する日になると、昼間独居(昼の時間帯に1人で過ごすこと)になります。父親は1人でご飯は食べることができますが、認知機能の低下もあり、尿意が曖昧です。
とある日会社での勤務を終えて帰宅された際に惨事に見舞われました。
廊下、寝室がおしっこまみれで濡れていました。仕事から帰宅したばかりの娘様が掃除をしなければならず、精神的にも身体的にも介護負担を特に感じられていました。
娘様の家の掃除についてはヘルパーの導入は介護保険サービスではできないため、自費のサービスを利用して定期的な掃除を受けられ、掃除による介護負担感がみるみる軽減され、笑顔も見られるようになりました。
長期的な介護が必要と考えているとお金を節約しがちです。民間のサービスを利用することで一人っ子さんにかかる精神的な負担と、おしっこの掃除をしなければならない身体的な負担を減らすことができました。
配食サービスの利用
パンといった調理が必要ではないもの、出来合いのものを購入するだけでは、親の好みに合わないことがあります。
栄養面の偏りが生じやすく、コンビニ弁当だけでは栄養が偏りが生じてしまう可能性があります。
コンビニ弁当だけを続けると、野菜や乳製品が少ないため特定の栄養素が不足します。特に食物繊維、カルシウム、ビタミン、ミネラル類が代表的で、これらが偏りを引き起こします。
参照元:弁当の栄養の偏り日本経済新聞
仕事終わりに調理をして、身の回りの介護までを一人っ子がしようとすると身体的、時間的な負担が増えていきます。
食事の面だけでも配食サービスを活用することをオススメします。
メディミールが他の宅配弁当と違う「3つの安心」
世の中には多くの宅配弁当がありますが、メディミールには専門機関ならではの強みがあります。
- 医療のスペシャリストによる監修
- 制限食なのに美味しさがある
- 栄養面についてプロの直接相談できる。
医療のスペシャリストによる監修
看護師、理学療法士、言語聴覚士といった医療専門チームが監修し、管理栄養士が献立を作成しています。単なる「低カロリー」ではなく、医学的知見に基づいたバランスが特徴です。
「制限食=味が薄い」を覆す美味しさ
「制限食だから味気ないのは仕方ない」と諦めていませんか? メディミールは「おいしく健康」がコンセプト。自社工場で一品一品手作りされており、加工食品や合成着色料、保存料を一切使われていません。
管理栄養士に直接相談できる
数値改善を本気でサポートするため、なんと電話で管理栄養士に食生活の相談が可能です。さらに、血液検査の結果を共有すれば、数値改善に向けた個別のアドバイスまで受けられるという、手厚いサポート体制が整っています。
安心を提供できるテクノロジーの活用
在宅の生活において見守りモニターを設置することも有効です。
いつでも見守れる安心感を提供することができ、転倒が起こったとしても具体的な対策方法の検討も行いやすくなります。

見守りモニターを利用することで一人っ子の介護負担が減ったケースを紹介します。
80代の父親と二人で暮らす娘様。
ある朝、1階で寝ていたはずの父親が、ベッドの横で転倒しているのを発見しました。父親に怪我はなかったものの、自力で起き上がることができず、誰にも気づかれないまま不安な夜を床で過ごしてしまいました。
「もしまた倒れて、気づけなかったら……」と娘様は強い後悔と不安に襲われ、それ以来、父親近くで隣で寝るようになりました。しかし、夜中に何度かトイレに立つ父親の気配で目が覚めてしまい、娘様は極度の睡眠不足に。
仕事にも影響が出始め、心身ともに限界が近づいていました。
対策のために娘様と相談し、導入したのが「見守りモニター」でした。
本来は赤ちゃん用のものですが、これを父親の部屋に設置し、娘様の自室から確認できるようにしました。
結果は劇的でした。モニターから見守れる安心感から、娘様は再び自分の部屋でぐっすり眠れるようになりました。
父親の寝室についても手すりなどの環境の調整も行い、転倒することはなくなりました。
テクノロジーを上手に活用することで、家族の健康と仕事、そして何より「安心」を取り戻した事例となりました。
Q&A
- Q遠方に住む親に介護が必要な場合にどのように関わるのがいいのか?
- A
一人っ子である場合は頼り先も少なく、移動時間や交通費などの時間、経済的な負担が生じてしまいます。
別居の家族などが介護している場合は全体の約12%程度(参考元:遠距離介護)
在宅で生活する場合には地域包括センターやケアマネージャーへの相談しましょう。自宅での生活が難しい場合は医療機関への転院、老人ホームなど施設への入居を検討します。
- Q介護するために退職(介護離職)をしたほうが良いのか?
- A
第一選択として、介護をするための離職はおすすめしません。
理由は親御さんと24時間一緒に過ごしていると、社会的な孤立感、慣れない介護に対する身体的、精神的なストレスの蓄積がかかることが多いです。
40〜50代の離職では再就職が難しくなることや再就職できたとしても収入が下がりやすいたまです。
対策として、仕事を休むための制度を活用する、老人ホームへの短期間の入居など自分自身と親の生活を成り立たせる方法を考えましょう。職場に相談することで業務調整、一時的な配置転換など親の介護と仕事を両立する手段に対して会社側も配慮してくれます。
大事なのは1人で抱え込まないこと。会社、行政を巻き込んで相談していくことをオススメします。
まとめ:あなたの人生を守ることが、最高の親孝行です

一人っ子が行う親の介護は、出口の見えないトンネルのように感じることがあるかもしれません。しかし、今の時代、介護は「家族の義務」から「社会で支える仕組み」へと変わっています。
- 「一人で背負わない」と決めること
- 「プロの伴走者」(ケアマネや相談窓口)を見つけること
- お金とテクノロジー」で時間を買う勇気を持つこと
この記事が、あなたの不安を少しでも安心に変えるきっかけになれば幸いです。
まずは、情報収集から行動を始めることが、あなたと親の笑顔を守る第一歩になります。





