
理学療法士になりたいけれど、ネットで「やめとけ」と出てくる。本当にやめた方がいいのかな。

子どもが理学療法士を目指したいと言っている。ネットの「やめとけ」を見て、背中を押していいのか迷う。
「理学療法士 やめとけ」と検索するのは、進路を決める前の、不安があるからではありませんか?
理学療法士を「やめとけ」と言われるのには、数字で見られる理由と、現場で働いて初めてわかる理由があります。
理学療法士として18年、訪問看護ステーションで10年以上勤務してきた私が解説します。
結論から言うと、理学療法士は「やめとけ」と決めつける仕事ではありません。
ただし、給料と人数のことは、目指す前に知っておく必要があります。
この記事を読むことで、「やめとけ」の声をどこまで信じるかを、自分の条件で決められるようになります。
目指す前に知っておくことが、入ったあとの後悔を減らします。
理学療法士がやめとけと言われる5つの理由

5つの理由は、数字で見られるものと、現場で働いて初めてわかるものに分かれます。
給料が上がりにくい

給料が上がりにくいといわれる背景には、制度があります。
病院が受け取るリハビリの料金(診療報酬)は、国が決めています。リハビリの診療報酬は、1単位ごとに点数が決まっています。
病院が料金を上げることはできません。
(出典:厚生労働省「診療報酬制度について」「令和6年度診療報酬改定の概要」)
理学療法士などの平均年収は約443.6万円です。月の給与を12か月分にして、年間の賞与を足した金額です。
年収は50代前半まで上がりますが、20代から50代まで、全産業の平均を下回っています。
20代前半から50代前半までに増える額は、 理学療法士などが約211万円 全産業の平均が約273万円です。
年齢ごとの数字は、同じ人を追ったものではなく、今の各年齢の人の平均です。

給料は、技術の高さだけでは決まりにくいと感じています。料金を国が決めているため、勤め先の収入に左右されるからです。
人数が増えている
理学療法士の資格を持つ人は、国家試験のたびに新しく加わります。

厚生労働省は2019年に、理学療法士と作業療法士の需給推計を示しました。
PT・OTの供給数は、現時点においては、需要数を上回っており、2040年頃には供給数が需要数の約1.5倍となる結果となった。
出典:厚生労働省「理学療法士・作業療法士の需給推計について」医療従事者の需給に関する検討会 第3回理学療法士・作業療法士需給分科会 資料1(平成31年4月5日)33ページ

人数の推計を見て不安になったときは、どんな職場で働きたいかを先に考えておくと、判断しやすくなります。
現役の理学療法士の不安は、 【18年目の本音】理学療法士の将来性が不安な人へ!後悔しないキャリアの考え方3つ で詳しくまとめています。
体力と心の負担が重なる
理学療法士の仕事は、体力と気持ちの両方を使います。患者さんの体を支えたり、動きを介助したりする場面があります。
私が訪問看護ステーションで感じてきた負担は、下記の3つです。
- 手指の負担:
評価や運動とあわせて、腰や背中のマッサージを続けるうちに、親指が痛くなりました。 - 集中力の負担:
マッサージの間など、会話の少ない時間が長く続くと、集中力を保つことに苦労しました - 暑さと寒さ:
真夏は屋外の移動で全身がだるくなり、真冬は声が出しにくくなったり、咳や鼻水が出たりすることが増えました
暑さと寒さの負担は、屋外を移動する訪問の仕事で出やすいです。

仕事のあとや休日の講習会と勉強会に、私は自分の意思で参加し続けてきました。年を重ねてからは、週明けに疲れが抜けきらないことが増えています。
人間関係で悩みやすい
理学療法士は、人との関わりが仕事の中心です。
理学療法士が関わる相手は、患者さんだけではありません。
立場の違う相手と調整する場面があります。
病院や介護老人保健施設(老健)でも、訪問看護ステーションでも、私は人間関係で悩んできました。

働く場所を変えても、人との調整はなくなりませんでした。
思い描いたリハビリとの差
現場では、リハビリの技術以外の仕事も求められます。新人の頃の私は、リハビリの内容だけにこだわっていました。
私が働いた訪問看護ステーションでは、リハビリ以外にも必要な仕事がありました。
社会人としての基本も、訪問を続けるために必要だと学びました。
利用者さんだけでなく、ご家族への情報共有や報告を普段から続けることも、欠かせませんでした。

利用者さんが動作を身につけることが正義だと、私は考えていました。訪問を続けるうちに、利用者さんとご家族の価値観に合わせることも仕事だと学びました。
理学療法士のやめとけは、誰が言っている声なのか

「やめとけ」の声は、書き手の立場によって、伝えたい方向が変わります。
2026年10月に「理学療法士 やめとけ」でGoogleを検索すると、おおきく3種類が含まれました。

記事を読むときは、書き手の立場と、いつ書かれたかを確かめると、判断を間違えにくくなります。
理学療法士は、働く場所で求められる力が変わります

訪問の現場では、技術に加えて、家ごとの価値観に合わせる力が求められます。
サッカーにたとえると、病院や老健はホームグラウンド、訪問看護はアウェイゲームです。
訪問看護では、利用者さんとご家族が暮らす家を訪問します。家には、長い人生の中で形づくられたルールや価値観があります。
医療や介護の知識を伝えることはできます。そのうえで、価値観を尊重しながら、折り合える点を探します。
利用者さんとご家族がぶつからないように、言葉を選ぶ技術も必要だと感じています。
退院された利用者さんやご家族から、入院中のつらかった思いを聞くこともあります。

訪問看護では、入院中の思いを受け止めながら、退院後の生活に伴走する立場が大切だと感じています。
病院以外の職場は、 【体験談】理学療法士の病院以外の働き方3選!老健・訪問リハ・訪問看護を比較 で比べています。
理学療法士を続けてきてよかったこと3つ

理学療法士を続けてきて、私がよかったと思うことは3つあります。
利用者さんの人生の貴重な時間に関われます
理学療法士が関わるのは、動作がよくなる場面だけではありません。
新しい病気やけが、老化や病気の進行で、動作の力が落ちていく時期もあります。

改善だけでなく、その方がよりよく人生を送ることに、微力ながら携われます。私が理学療法士を続けてきてよかったと思う理由です。
働く場所を変えても、前の職場の経験が活きます
理学療法士は国家資格なので、職場を変えても同じ資格で働けます。
私は訪問のリハビリを続けたくて、訪問看護ステーションへ移りました。
病院のリハビリでは、家での生活に向けて、動作の練習と環境の調整をします。ただ、実際に家で生活してみないと、わからないことがあります。

病院のリハビリのゴールと、在宅のリハビリのゴールの違いを説明しています。
医療機関から訪問看護ステーションへ移った経緯と、感じた差は、 【転職】理学療法士が医療機関から訪問看護ステーションに転職して感じたメリット・デメリット3選 に書いています。
病院以外にも、働き方があります
私が経験してきた病院以外の働き方だけでも、3つあります。

資格を取ったあとに、働く場所を選び直せることは、この仕事の強みだと考えています。
理学療法士の給料は、働く場所・役割・副業で変わります

同じ理学療法士でも、給料の上がり方には差があります。
働く場所と役割で、給料は変わります
職場によっては、訪問件数に応じたインセンティブがあります。
訪問で働く場合の実際の給与は、 【実録】理学療法士の訪問リハビリの年収は本当に高い?給料が高い理由と落とし穴 で、私の実例2つを紹介しています。

インセンティブだけで年収600万円に届くのは難しく、管理職などへのステップアップが前提になると感じています。
副業で、収入の柱を増やす人もいます
理学療法士の専門性を活かした副業には、オンライン講座の講師や、ブログ・SNSでの情報発信があります。
副業を始める前に、職場の就業規則で、副業が認められているかを確認してください。
情報発信では、患者さんや利用者さんの個人情報を書かないことが前提です。
理学療法士に向いていない人・向いている人 3選

向き不向きは、仕事の中身との相性で分かれます。
向いていない人

資格は、将来を保証するものではなく、スタート地点です。
向いている人
理学療法士のやめとけで後悔しない、目指す前の確認3つ

入学前にできる確認は、学校選びが2つ、地域のイベントへの参加が1つです。
学校の合格率は、新卒だけの数字かどうかを確かめます
国家試験の合格率は、全体と新卒で数字が違います。第61回の全国の合格率は、 全体が89.7% 新卒が94.9%でした。

学校が出している合格率が、新卒だけの数字かどうかを確かめてください。
オープンキャンパスでは、卒業生の進路と実習先を聞きます

実習先の経験は将来の進路を決める上で重要な経験と情報になります。選択肢の多い学校を選んでいると、卒業時の選択肢を増やすことができます。
入学前に、地域のイベントに参加しておきます
理学療法士を目指すなら、入学前に現場を知っておきたいところです。
ただし、病院のリハビリ見学は、個人情報や感染症対策の面で、申し込むことが難しいと私は感じています。
私のおすすめは、地域のイベントに参加することです。
子どもから高齢の方まで、地域で暮らす方と同じ場で過ごす経験になります。

私自身は、入学前に参加しておけばよかったと後悔しています。
理学療法士が合わなかったとき、先に確かめること

合わないと感じたときに確かめる先は、学生のときと、資格を取ったあとで違います。
学生の途中で進路を変えるのは、失敗ではありません
学校を続けるか迷ったら、先に学校の相談窓口に話します。
学費の扱いや、取得した単位の扱いは、学校ごとに違います。変更を決める前に、学校の事務局で、条件を確認してください。
奨学金を借りている場合は、借りている先にも確認してください。
資格を取ったあとは、職場を変える道があります
人との調整は、職場を変えてもなくなりません。
一方で、屋外の移動があるかどうかや、給与の仕組みは、職場によって違います。
合わない原因が職場にあるなら、職場を変えることも選択肢になります。職場を変えるときは、先に求人を見て、条件を比べておくと判断しやすくなります。
ほかの医療系の仕事に就けるかは、よくある質問の4つ目に書いています。
親御さんへ:入学前に、合わなかったときの話もしておきます
入学前に、お子さんが「なぜ理学療法士なのか」を言葉にできているかを確かめます。
話しておきたいことは、下記の3つです。
理学療法士のやめとけでよくある質問

- Q今から理学療法士を目指しても、就職先はありますか?
- A
厚生労働省の2019年の推計では、2040年頃に供給数が需要数の約1.5倍になる結果でした。数字は、理学療法士と作業療法士を合わせたものです。競争が厳しくなる可能性はあるため、学校の就職実績で、卒業生の働き先を確かめてください。病院以外にも、介護施設や訪問の職場があります。
- Q偏差値が高くなくても、理学療法士を目指せますか?
- A
入学後に必要なのは、国家試験まで勉強を続けることです。第61回の国家試験の合格率は、全体で89.7%、新卒で94.9%でした。合格率は、受験した人のうちの割合です。学校選びでは、入学した人のうち何人が合格まで進んだかと、サポート内容を確かめてください。
- Q社会人から理学療法士を目指すのは、遅いですか?
- A
社会人から目指す人もいます。昼間の学校に通う場合は、仕事を続けにくくなります。学費と生活費の計画を、先に立ててください。夜間部など、働きながら通える学校があるかと、実習の期間の通い方を、学校に確かめてください。
- Q理学療法士の資格で、ほかの医療系の仕事に就けますか?
- A
ほかの医療職の仕事に就くには、その職種の免許が必要です。理学療法士の知識を活かせる資格には、ケアマネジャー(介護支援専門員)などがあります。受験には実務経験などの条件があり、私も理学療法士として働きながら、ケアマネジャーの資格を取りました。
- Q親に「やめとけ」と言われています。どう話せばいいですか?
- A
先に、親御さんが不安に思っていることを聞いてください。お金なのか、将来なのかで、答え方が変わります。そのうえで、国の数字と、学校の説明会で聞いた内容を、一緒に見てください。
まとめ 理学療法士はやめとけより、自分に合うかで決めましょう

最後に、この記事の要点です。
「やめとけ」の一言で、進路を決める必要はありません。
国の数字と、学校で聞いた内容を確かめたうえで、自分の条件で選んでください。

私は最初、「手に職をつけたい」という理由で理学療法士になりました。子どもが生まれて収入面で不安を感じたことも、多々あります。それでも続けてこられたのは、人の役に立てる実感と、職域の広がりがあるからです。


