准看護師は、日本の医療現場で重要な役割を果たす看護職の一つです。
その歴史、役割、資格取得方法、そして今後の展望について詳しく説明します。
制度の起源と発展
准看護師制度の起源は1915年(大正4年)の『看護婦規則』にさかのぼります。
当時、急激な病院の増設により看護師の需要が急増しましたが、女子の高校進学率が低く、十分な数の看護師を育成することが困難でした。
その主な理由は以下の通りです:
- 女子の高校進学率の低さ:1951年当時、女性の高校進学率はわずか35%程度でした。
- 看護師資格の要件:正看護師になるには高卒資格が必要でした。
これらの要因により、高卒資格が必要な看護師を十分に増やすことが難しい状況でした。
そこで、1951年に保健師助産師看護師法の一部改正が行われ、准看護師制度が創設されました。
この制度は、中学校卒業を要件とし、看護師を補助する資格として発足しました。
准看護師制度の主な目的は以下の通りでした:
- 看護師不足への対応:より簡易的な資格を作ることで、医療現場の人手不足を補うこと。
- 教育要件の緩和:中学校卒業を要件とすることで、より多くの人材を確保すること。
1947年(昭和22年)に『保健婦助産婦看護婦令』が公布され、看護婦を甲種と乙種に分けました。
1948年に「保健婦助産婦看護婦法」が公布され、看護職は女性を前提とした「看護婦」として規定されました。
男性の看護職は「看護人」と呼ばれ、看護婦に関する規定が準用されていました。
1951年の法改正により、甲種・乙種の区別が廃止され、「准看護婦」(現在の准看護師)制度が設けられました。
この制度は、中学校卒業を要件とし、看護師を補助する資格として発足しました。
「千円看護婦」の誕生
1951年の保助看法改正時には、興味深い現象が起きました。同年8月31日までに千円を添えて手続きをすれば「看護婦」になることができるという措置が取られ、これにより「千円看護婦」と呼ばれる看護職が誕生しました。
基準看護制度の導入
1958年10月には、社会保険制度に基づく標準的入院サービスとして「基準看護」制度が設けられました。
これにより、看護サービスが初めて診療報酬に加算点数として新設され、経済的に評価されるようになりました。
准看護師ができること
准看護師は、看護師とほぼ同様の業務を行うことができます。
主な業務内容は以下の通りです:
- バイタルチェック
- 点滴・注射・採血
- 食事・排泄・入浴介助
- 手術・診療補助
- カルテの記入
これらの業務は、医師や看護師の指示のもとで行います。
資格取得方法
准看護師の資格を取得するには、以下の方法があります:
- 中学校卒業後の場合:
- 衛生看護科のある高等学校で3年間(定時制の場合4年間)学ぶ
- 准看護師養成学校で2年間学ぶ
- 高校卒業後の場合:
- 准看護師養成学校で2年間学ぶ
- 看護大学で4年間学ぶ
- 看護系短大・専門学校で3〜4年間学ぶ
いずれの場合も、必要な課程を修了した後、准看護師試験を受験し合格する必要があります。
合格後、都道府県知事より免許が発行されます。
今後の展望
准看護師制度は約40年間大きな改正がなく、21世紀を踏まえた新たなビジョンが必要とされています。
医療の高度化や看護師不足の問題に対応するため、准看護師の役割や教育制度の見直しが検討されています。また、准看護師から正看護師へのキャリアアップの道も開かれており、2年課程の進学コースなどが設けられています。
これにより、准看護師としての経験を活かしながら、より高度な看護技術を習得することが可能となっています。
准看護師は、日本の医療現場において重要な役割を果たし続けており、今後も需要が高まると予想されます。しかし、医療の進歩に合わせて、准看護師の教育や役割についても継続的な検討が必要とされています。