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【解説】介護保険の成立と歴史について

制度
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介護保険制度は、日本の高齢者介護を支える重要な仕組みとして2000年4月に始まりました。

この制度の成り立ちと歴史について、初心者にも分かりやすく説明していきます。

介護保険制度の背景

高齢化社会の進展

日本の高齢化は急速に進んでいます。
1950年には総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)が4.9%でしたが、1994年には14%に達しました。

さらに、2025年には30%を超えると予測されています。この急激な高齢化に伴い、介護を必要とする高齢者の数も増加しています。

家族構造の変化

核家族化の進行や、介護する家族自身の高齢化により、自宅で高齢者を介護することが難しくなってきました。

かつては「家族介護」が当たり前でしたが、社会構造の変化に伴い、それが困難になってきたのです。

医療費の増大

1970年代に老人医療費が無料化されたことで、高齢者の長期入院(社会的入院)が増加し、医療費の高騰が深刻な問題となりました。

これは、本来は介護が必要な高齢者が、医療機関に長期滞在することで起こる問題です。

介護保険制度以前の状況

措置制度

介護保険制度が導入される前は、「措置制度」と呼ばれる仕組みで高齢者介護が行われていました。

この制度では:

  1. 市町村が介護サービスの種類や提供機関を決定
  2. 利用者自身がサービスを選択できない
  3. 競争原理が働かないため、サービス内容が画一的
  4. 所得調査が必要で、利用に抵抗感がある
  5. 中高所得者の負担が重い

これらの問題点があり、高齢者の多様なニーズに対応できない状況でした。

介護保険制度の誕生

法案の提出と成立

1996年11月、橋本龍太郎政権下で介護保険法案が国会に提出されました。

そして1997年12月に可決成立し、約2年間の準備期間を経て、2000年4月から施行されました。

制度設計の基本的な考え方

介護保険制度は、以下の3つの基本的な考え方に基づいて設計されました:

  1. 高齢者の自立支援
  2. 利用者の選択による多様なサービス提供
  3. 社会保険方式の採用

これらの考え方は、それまでの「措置制度」とは大きく異なり、利用者本位のサービス提供を目指したものでした。

介護保険制度の仕組み

被保険者と保険料

介護保険制度の大きな特徴は、40歳以上のすべての人が被保険者となることです。

被保険者は以下の2種類に分けられます:

  1. 第1号被保険者:65歳以上の人
  2. 第2号被保険者:40歳以上65歳未満の医療保険加入者

保険料は、年金からの天引きや個別の納付により支払われます。

サービス利用の流れ

  1. 要介護・要支援認定の申請
  2. 認定調査と主治医意見書
  3. 介護認定審査会による判定
  4. 要介護度の決定
  5. ケアプランの作成
  6. サービスの利用

利用できるサービス

介護保険で利用できるサービスは多岐にわたります。
主なものには:

  • 訪問介護(ホームヘルプサービス)
  • 通所介護(デイサービス)
  • 短期入所生活介護(ショートステイ)
  • 特別養護老人ホーム
  • グループホーム
  • 介護老人保健施設

などがあります。

介護保険制度の変遷

2006年の改正

2006年の改正では、「介護予防」の概念が導入されました。

これは、要介護状態になることを防ぐ、あるいは重度化を防ぐことを目的としたものです。
具体的には:

  • 介護予防訪問介護
  • 介護予防通所介護

などのサービスが新設されました。

2015年の改正

2015年の改正では、地域包括ケアシステムの構築に向けた取り組みが強化されました。
主な変更点は:

  1. 予防給付の一部を地域支援事業に移行
  2. 特別養護老人ホームの入所要件の厳格化
  3. 一定以上所得者の利用者負担の引き上げ

2018年の改正

2018年の改正では、地域包括ケアシステムの深化・推進と介護保険制度の持続可能性の確保がテーマとなりました。
主な変更点は:

  1. 自立支援・重度化防止に向けた保険者機能の強化
  2. 医療・介護の連携の推進
  3. 地域共生社会の実現に向けた取り組みの推進

介護保険制度の課題と今後の展望

財政面の課題

高齢化の進展に伴い、介護給付費は年々増加しています。
2000年度に約3.6兆円だった給付費は、2020年度には約10兆円に達しています。
この増加傾向は今後も続くと予想され、制度の持続可能性が大きな課題となっています。

人材確保の課題

介護職員の不足も深刻な問題です。厚生労働省の推計によると、2025年には約34万人の介護職員が不足すると言われています。

人材確保と育成は、介護サービスの質を維持・向上させる上で重要な課題です。

地域包括ケアシステムの構築

高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けられるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の構築が進められています。
この実現に向けて、地域の特性に応じた取り組みが求められています。

テクノロジーの活用

介護ロボットやICTの活用により、介護の質の向上と効率化が期待されています。

例えば、見守りセンサーや介護記録システムの導入などが進んでいます。今後は、AIやIoTなどの先端技術の活用も検討されています。

まとめ

介護保険制度は、高齢化社会における介護の社会化を目指して創設されました。制度開始から20年以上が経過し、日本の高齢者介護を支える重要な仕組みとして定着しています。しかし、財政面や人材確保など、さまざまな課題も抱えています。

今後は、これらの課題に対応しつつ、高齢者一人ひとりの尊厳を保持し、自立した生活を支援できるよう、制度のさらなる進化が求められています。また、介護の問題は社会全体で取り組むべき課題であり、地域や世代を超えた支え合いの仕組みづくりも重要となっています。

介護保険制度は、私たち一人ひとりに関わる重要な制度です。40歳になったら被保険者となり、保険料を納めることになります。そして、いずれは自分自身やその家族がサービスを利用する立場になるかもしれません。そのため、この制度について理解を深め、よりよい高齢社会の実現に向けて、私たち一人ひとりが考え、行動することが大切です。


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