はじめに
病院勤務から訪問看護への転職は、大きなキャリアの転機となります。
医療の現場は同じでも、働き方・求められるスキル・責任の重さが大きく異なります。
この記事では、訪問看護ステーションへの転職を成功させるために、知っておくべき「五箇条」を初心者向けに解説します。
第一条:「一人で判断する力」が求められることを理解するべし
訪問看護の最大の特徴は、「看護師が一人で利用者宅に伺い、必要な看護を行う」という点です。
つまり、その場の判断はすべて看護師に委ねられるということ。
具体的には…
- バイタルサインが急変したときにどう対応するか
- 家族から医療以外の相談を受けたときの返答の仕方
- 医師に報告すべき症状の見極め
- ケアマネジャーとの連携の必要性 など
ポイント
訪問先では「相談できる相手がすぐそばにいない」ため、自分で状況を見て、優先順位をつけ、対応を決める必要があります。
新人のうちは不安もありますが、事前の情報収集とマニュアル理解、そして経験の積み重ねが何よりの武器になります。
第二条:「運転・移動」も仕事のうちと心得るべし
訪問看護は基本的に「利用者宅に向かう」仕事です。そのため、車(または電動自転車)での移動が必須。
運転が苦手な人にとっては、この部分が大きなストレスになることもあります。
注意点
- 車の運転免許が必要な事業所が多い
- 悪天候でも訪問がある(雨や雪の日でも)
- 移動時間も勤務時間に含まれるが、時間管理能力が求められる
- 地理感覚が必要。ナビ任せでは限界があることも
アドバイス
運転に不安がある場合は、「電動自転車訪問がメイン」「都市部で公共交通機関を活用する」などのスタイルを取っているステーションもあります。
面接時に訪問手段についてしっかり確認しておくことが大切です。
第三条:「コミュニケーション力」は病院以上に重要と心得るべし
訪問看護は「利用者本人」だけでなく、「家族」「ケアマネジャー」「主治医」「薬剤師」「リハビリ職」など、さまざまな関係者と連携して支援します。
チームケアの要になるのが訪問看護師の役割とも言えます。
よくある場面
- 利用者の訴えを医師に的確に伝える
- 家族の不安や疑問に寄り添って説明する
- ケアマネジャーとサービス内容を調整する
- 他職種とのカンファレンスで意見を交わす
ポイント
病院では「医師の指示に従って実行する」場面が多かった人でも、訪問看護では**「自ら意見を言い、調整する力」**が求められます。
苦手意識があっても、経験を重ねることで必ず成長できます。
まずは「報告・連絡・相談(ホウレンソウ)」の徹底を心がけましょう。
第四条:「在宅ならではのリスク」を知るべし
在宅でのケアには、病院とは異なるリスクや制限が存在します。
医療機器の数、緊急対応の体制、感染対策の範囲、物品の補充など、限られた環境で最大限の看護を提供しなければなりません。
例)
- 利用者のベッド周辺に十分なスペースがない
- 感染症の予防策が家庭で十分に整っていない
- 医療物品が不足している(ガーゼや注射針など)
- 災害時の対応(停電・断水時のケア継続)
対策
こうした状況を踏まえ、訪問前にしっかりと情報収集し、臨機応変に対応できる力が重要になります。ステーションによっては、物品管理や感染対策のマニュアルが整備されているので、転職時に確認しておきましょう。
第五条:「事業所選び」は転職成功のカギと知るべし
訪問看護の仕事はステーションによってカラーが大きく異なります。
教育体制が整っていないと孤独感を感じやすいこともあるため、未経験者は特に「事業所選び」が極めて重要です。
チェックすべきポイント
- 教育制度・研修体制があるか
- 同行訪問の期間は?
- OJTやフィードバック体制は?
- オンコールの有無と頻度
- 夜間・休日対応の体制は?
- 実際に出動するケースがどれくらいあるか
- スタッフの人数・年齢層・雰囲気
- 離職率は高くないか?
- チームワークやフォロー体制は?
- 訪問件数・業務量
- 一日の訪問件数は?移動距離は?
- 書類作成の負担感(電子カルテの使いやすさなど)
アドバイス
見学や面接のときには、「一日の流れ」や「訪問先の雰囲気」について質問してみましょう。自分の生活スタイルや目指すキャリアに合った事業所を選ぶことが、長く働くうえでの最大のポイントです。
おわりに:訪問看護は「やりがいと責任のバランス」が問われる世界
訪問看護は、看護師の専門性をフルに活かせるやりがいのあるフィールドです。しかし同時に、責任の重さや孤独感、環境の厳しさも伴います。
だからこそ、しっかりと準備し、正しい情報を持って転職に臨むことが成功の秘訣です。
今回ご紹介した五箇条を参考に、自分に合った働き方や職場を見つけてください。初心者の方でも、やる気と学び続ける姿勢があれば、訪問看護で活躍することは十分に可能です。