自宅や施設に訪問をして、リハビリテーションを受ける方法に訪問看護と訪問リハビリのサービスが存在します。
どちらの制度でも理学療法士、作業療法士や言語聴覚士の専門職による個別のリハビリテーションを受けることが可能です。
名称はかなり似ていますが、訪問看護と訪問リハビリとではいくつかの重要な違いがあります。
これらの違いを初心者にも分かりやすく説明していきます。
サービスの定義と目的
訪問看護でのリハビリ
訪問看護は、疾病や負傷により自宅で療養している人に対して、看護師等が訪問して療養上の世話や必要な診療の補助を行うサービスです。
訪問看護の中でリハビリテーションを提供することもあり、これは「訪問看護」の一環として位置づけられています。
訪問リハビリテーション
訪問リハビリテーションは、要介護者の自宅を訪問し、心身の機能の維持回復を図り、日常生活の自立を助けることを目的としています。
理学療法、作業療法、言語療法などの専門的なリハビリテーションを提供します。
提供主体の違い
訪問看護でのリハビリ
- 訪問看護ステーションが提供します。
- 事業所に必ず看護師がおり、定期的に看護師の訪問があります。
介護保険では少なくとも概ね3ヶ月に1回の頻度です。 - 看護師の24時間対応や、同じ事業所で緊急時訪問なども可能です。
訪問リハビリテーション
- 医療機関(病院・診療所、介護老人保健施設・介護医療院)が提供します。
- 事業所に必ず医師がおり、リハビリ専門職員が医師と連携しながらリハビリを進めることができます。
サービス内容の特徴
訪問看護でのリハビリ
- 看護ケアとリハビリテーションを組み合わせたサービスを提供します。
- 看護師による健康管理と、リハビリ専門職によるリハビリテーションを受けられます。
- 24時間対応が可能で、緊急時のサポートも受けやすいです。
緊急時の対応は看護師が行います。事前に24時間の対応を行う契約を結んでおく必要があります。
訪問リハビリテーション
- リハビリテーションに特化したサービスを提供します。
- 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの専門職が訪問します。
- 医師との連携が密接で、医学的な観点からのリハビリテーションが可能です。
利用可能な時間や回数の制限
医療保険の場合
訪問看護でのリハビリ
- 1回30~90分、週に3回まで利用可能です。
実務では40分や60分など事業所によって時間を設定している事が多くあります。
訪問リハビリテーション
- 1単位20分、1日3単位まで、週6単位まで利用することができます。
- 退院から3か月以内の場合は週12単位まで利用可能です。
介護保険の場合
訪問看護でのリハビリ
- 1回20分、1日3回まで、週に6回まで利用可能です。
訪問リハビリテーション(介護保険)
- 1回20分、1日3回まで、週6回までの利用が可能です。
提供されるサービスの内容
訪問リハビリテーションと訪問看護でのリハビリは、どちらもリハビリの専門職が訪問するため、
提供内容に大きな違いはありません。
以下は、両サービスで提供される一般的な内容です:
- 病状の観察
- バイタルチェック(体温、脈拍、呼吸、血圧測定等)
- 身体的病状の観察
- 精神面の健康状態の確認
- 介助者の健康状態の確認
- 心身トラブルの再発予防と回復期間の見立て2
- 身体機能の改善
- 身体機能(筋力、柔軟性、バランス等)の維持、改善
- 痛みの評価と物理療法等の疼痛緩和
- 摂食嚥下機能やコミュニケーション機能の改善2
- 日常生活の指導・助言
- ADL(日常生活動作)指導
- 福祉用具または補装具、住宅改修など環境面の評価と相談
- 他の介護サービススタッフに対するケア方法の助言・指導
- QOL(生活の質の向上)や趣味、社会参加促進のための助言2
- 介護相談、家族支援
- 療養生活上の相談、家族への介護指導、精神的な支援
- 福祉制度利用の助言、相談
- ケアマネジャーとの連携2
具体的なリハビリテーション内容
両サービスで提供される具体的なリハビリテーション内容は以下の通りです:
- 基礎的な運動機能の改善・維持
- 関節可動域訓練
- 関節拘縮の予防
- 筋力の維持・増強
- 日常生活動作の訓練
- 寝返りや起き上がり等のベッド上での訓練
- 座位・立位等姿勢保持のための訓練
- 歩行訓練
- 着替えや食事、トイレでの動作等の指導や訓練
- 家事動作の訓練
- 調理、洗濯、掃除などの安全で効率的な動作練習
- 自主トレーニングの指導とアドバイス
- 自宅で行う自主トレーニングメニューの作成・指導
- 住宅改修・装具作成等のアドバイス
- 段差解消や手すりの設置などの助言・指導
- 浴室やトイレ、玄関等の家屋改造の相談・助言
- 福祉用具の提案
- 家族への介護方法のアドバイス
- 安全で負担の少ない介助方法の指導
- 必要な介護用品の助言
選択の基準
訪問リハビリテーションと訪問看護でのリハビリ、どちらを選択するかは以下の要因によって決まります:
- 医療的ケアの必要性:医療的ケアが必要な場合は、訪問看護でのリハビリが適している可能性があります。
- リハビリテーションの専門性:より専門的なリハビリテーションが必要な場合は、訪問リハビリテーションが適しているかもしれません。
- 24時間対応の必要性:緊急時の対応が必要な場合は、訪問看護でのリハビリが適しています。
- 主治医の判断:主治医の判断や推奨に基づいて選択することも重要です。
- 利用者の状態と目標:利用者の現在の状態と、リハビリテーションの目標に応じて選択します。
- 利用可能な回数や時間:利用したい頻度や時間によって、適切なサービスを選択します。
利用料金
医療保険の場合
サービス種別 | 20分 | 40分 | 60分 | 備考 |
---|---|---|---|---|
訪問リハビリテーション | 3,000円 | 6,000円 | 9,000円 | 1割負担の場合:300円、600円、900円 |
訪問看護でのリハビリ | 3,186円 | 6,373円 | 8,617円 | 1割負担の場合:319円、638円、862円 |
介護保険の場合
サービス種別 | 20分 | 40分 | 60分 | 備考 |
---|---|---|---|---|
訪問リハビリテーション | 3,070円 | 6,140円 | 9,210円 | 1割負担の場合:307円、614円、921円 |
訪問看護でのリハビリ | 3,078円 | 6,157円 | – | 1割負担の場合:308円、616円 |
注意事項:
- 医療保険の場合、自己負担割合(1割、2割、3割)により実際の支払額が変わります。
- 介護保険の場合、要介護度や地域加算により料金が変動します。
- 訪問看護でのリハビリは、介護保険の場合、週6回まで、合計週120分までの制限があります。
- 医療保険の訪問看護でのリハビリは、週4日以上提供した場合、4日目以降は報酬が減額されます。
- 表の金額は概算であり、実際の料金は医療機関や事業所、地域によって異なる場合があります。
まとめ
訪問リハビリテーションと訪問看護でのリハビリは、どちらも自宅でリハビリテーションを受けられる貴重なサービスです。
主な違いは提供主体(医療機関か訪問看護ステーションか)と、サービスの位置づけ(リハビリテーション主体か看護ケアの一環か)にあります。
利用者の状態、目標、医療的ケアの必要性、24時間対応の必要性などを総合的に考慮し、主治医やケアマネジャーと相談しながら、最適なサービスを選択することが重要です。
どちらのサービスも、利用者の生活の質を向上させ、自立を支援することを目指しています。
最後に、これらのサービスは介護保険制度や医療保険制度の枠組みの中で提供されるため、利用にあたっては事前に制度や利用条件を確認することが大切です。
また、サービスの内容や提供方法は、地域や事業所によって多少の違いがある可能性があるため、具体的な利用を検討する際は、地域の事業所や担当のケアマネジャーに直接相談することをお勧めします。
以上、参考になれば幸いです。