~安心・安全なサービス提供のために~
訪問看護ステーションの運営には、医療・介護・福祉・労働に関する多くの法律が関係しています。これらの法律を正しく理解し、遵守することは、利用者に適切なケアを届けるだけでなく、スタッフの働きやすさや安全の確保にもつながります。
ここでは、訪問看護に関わる代表的な法律とそのポイントを、初心者にもわかりやすく解説します。
▶ 医療・介護に関する法律
1. 健康保険法・国民健康保険法
目的: 医療保険制度の基本を定めた法律。
訪問看護との関係:
- 医療保険を利用する訪問看護サービスの条件・対象・報酬が規定されています。
- 特定疾患や急性増悪時の訪問看護は、医療保険で対応されるケースがあります。
📌ポイント: 医療保険で訪問看護を受けるには、医師の訪問看護指示書が必要です。
2. 介護保険法
目的: 高齢者が住み慣れた地域で介護を受けながら自立生活を続けられるよう支援。
訪問看護との関係:
- 要支援・要介護認定を受けた方に対して、ケアマネジャーの作成するケアプランに沿って訪問看護を提供。
- 訪問看護は「居宅サービス」のひとつとして位置づけられています。
📌ポイント: 利用者の状態により、「医療保険」と「介護保険」どちらが適用されるかの判断が重要です。
3. 高齢者の医療の確保に関する法律(高齢者医療確保法)
目的: 高齢者の健康保持・適切な医療の提供、財政の安定を目指す制度設計。
訪問看護との関係:
- 後期高齢者(75歳以上)への医療費支援制度を通じて、訪問看護も財政的に支援されます。
4. 児童福祉法
目的: すべての子どもの健全な育成と福祉を保障。
訪問看護との関係:
- 医療的ケア児など、在宅で医療支援が必要な子どもにも訪問看護を提供。
- 小児の訪問看護には専門性が求められます。
5. 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)
目的: 感染症の拡大防止・報告義務などを規定。
訪問看護との関係:
- スタッフや利用者の感染予防策(マスク着用、手指消毒など)を徹底。
- 感染症が確認された場合、医師・保健所への届出義務があります。
6. 生活保護法
目的: 経済的困窮者に必要な医療や生活支援を提供。
訪問看護との関係:
- 医療扶助を通じて、生活保護を受けている人でも訪問看護が受けられます。
- 福祉事務所と連携してサービス提供を行います。
7. 障害者総合支援法(旧:障害者自立支援法)
目的: 障害のある人の自立支援と社会参加を支援。
訪問看護との関係:
- 重度訪問介護などと連携し、障害のある方への医療的ケアを提供。
- 精神疾患や発達障害を含む幅広い対象に対応。
▶ 労働・雇用に関する法律
1. 労働基準法
目的: 労働者の権利保護(労働時間、賃金、休暇など)。
訪問看護との関係:
- 労働時間や残業管理、最低賃金の順守が必要。
- 訪問スケジュールによる長時間労働や休憩の確保に注意が必要です。
2. 労働安全衛生法
目的: 安全な職場環境の整備と労働者の健康保持。
訪問看護との関係:
- 感染予防対策、移動中の事故防止、メンタルヘルス対策などが求められます。
- 感染症や腰痛などのリスク管理も重要です。
3. 育児・介護休業法
目的: 育児や介護と仕事の両立を支援する法律。
訪問看護との関係:
- スタッフが安心して育児・介護休暇を取得できる環境整備が求められます。
▶ 訪問看護サービスの根拠「訪問看護指示書」
訪問看護サービスは、必ず主治医が交付する**「訪問看護指示書」**に基づいて行います。
- 医師が患者の病状や必要なケア内容を記載
- 看護師はこの指示書をもとに訪問看護計画を立て、実施
- 指定訪問看護ステーションにとっては運営上不可欠な文書です
📌ポイント: 法的にも、この指示書があることで保険請求が可能になります。
▶ 法律遵守の重要性と運営の課題
訪問看護ステーションでは、医療保険・介護保険・福祉制度が複雑に関わり合っています。
また、行政による実地指導や監査もあるため、法令違反があると重大な処分を受ける可能性もあります。
具体的な課題:
- 保険の適用区分(医療 or 介護)の判断が難しい
- サービス提供記録の正確性
- 利用者との契約・説明責任の履行
- スタッフの働き方改革や安全管理
✅ まとめ
訪問看護ステーションでは、次のような法律を理解・遵守することが求められます:
- 利用者に適切な医療・介護サービスを提供するための法律(健康保険法・介護保険法など)
- 働くスタッフを守るための法律(労働基準法・労働安全衛生法など)
- 感染症対策や社会的弱者への配慮に関する法律(感染症法・生活保護法・障害者総合支援法など)
法律の理解は、「質の高いケア」「安全な職場」「信頼される事業所」の土台となります。
スタッフ全員で定期的に確認し、安心・安全な訪問看護を目指しましょう。