訪問看護や訪問系サービスにおいて、第一印象はとても大切です。服装や言葉遣いだけでなく、足元のふるまいも利用者さまやご家族に安心感を与える大事な要素となります。
特に「スリッパ」は、ご自宅という生活の場に入る際の礼儀や清潔感を示すものです。本記事では、スリッパの歴史から、訪問時に求められる正しいマナーまでを整理してご紹介いたします。
- スリッパの歴史と日本文化との関わり
- 訪問看護や訪問サービスにおけるスリッパの役割
- スリッパの正しいマナー
- 利用者宅でのシチュエーション別対応
- 床材による使い分け
- 必ずスリッパを履くべき場面
- 訪問看護におけるスリッパマナーの意義
スリッパの歴史:訪問マナーと日本文化の背景
スリッパが日本で使われるようになったのは、明治時代初期のことです。当時、多くの外国人が来日しましたが、日本家屋は畳中心で靴を脱いで生活する習慣がありました。外国人が靴のまま畳に上がることで部屋が汚れる、畳が傷むといった問題が起こり、文化的な摩擦も生じました。
この状況を和らげるため、仕立て職人の徳野利三郎が1868年に「靴を履いたままでも使えるオーバーシューズ」としてスリッパの原型を考案しました。これは日本の家屋を守りつつ、外国人にも受け入れやすい工夫であり、「異文化を尊重しながら共に歩む」象徴といえるものでした。
その後、スリッパは洋館や旅館、ホテルなどで来客用に広まり、やがて家庭にも普及しました。清潔さや床の保護、そしておもてなしの心を表す道具として、日本の暮らしに根付いていったのです。

訪問時にスリッパを履く理由とマナーの基本
訪問看護の場でスリッパを履くのは、単なる習慣ではありません。いくつかの大切な理由があります。
- 清潔さの確保
外から持ち込む汚れを最小限にし、室内を清潔に保つ。 - 敬意の表現
ご自宅を大切に扱う姿勢を示し、利用者さまやご家族に安心感を与える。 - 感染症予防
靴下や素足で直接床を歩くよりも、スリッパを履いたほうが衛生的な場合もある。
このように、スリッパは「安心と信頼」を形にするアイテムでもあるのです。

利用者宅でのシチュエーション別スリッパマナー
玄関にスリッパが並べられている場合
案内された場合は素直に使用し、使用後は清潔に揃えて戻しましょう。
スリッパがスリッパラックに置いてある場合
「お借りしてよろしいですか」と一言確認をしてから使用すると、より丁寧です。
玄関にスリッパが見当たらない場合
利用者さまの習慣としてスリッパを使っていないこともあります。その場合は、持参した清潔なスリッパを使用すると安心です。
カーペットやフローリングの場合はどうする?スリッパの使い分け
近年は畳だけでなく、フローリングやカーペット敷きのご家庭も増えています。
- カーペットの上
「そのまま上がってください」と言われることもありますが、基本は持参のスリッパを着用するのが望ましいです。カーペットに汗や皮脂が直接つくのを避けられます。 - フローリングの上
傷や汚れを防ぐためにもスリッパを履くのが適切です。
床材にかかわらず「清潔さと敬意を示す」という観点で判断するとよいでしょう。
スリッパの正しい脱ぎ方と退出時のマナー
玄関でのスリッパの履き方
- 玄関先で靴を脱ぐ際は、正面を向いたまま靴を脱ぎます。
- スリッパが並べられている場合は、そのまま足を通して履いて室内に上がります。
- 靴を揃える際は、振り返って斜めにしゃがみ、お尻を家の方に向けないように配慮します。
- 年長者が同伴の場合は先に上がるのが一般的です。
退室の仕方
- 退室ままの時は玄関の方を向いた(室内を背にしたまま)スリッパを脱ぎます。
- 靴を履いた後、向き直ってスリッパの向きを反対(履き口が手前)に揃えて玄関脇や指定場所に置きます。
- スリッパを重ねたり片付けたりせず、相手に配慮しながら動作を丁寧に行うことが大切です。
このように、相手にお尻を向けない・揃える・丁寧さが重要です。。
利用者さんの習慣にかかわらず、必ずスリッパを履くべき場面
- 感染症が流行しているとき
- 利用者さまが衛生管理を特に気にされる場合
- 冬場や床が冷たく、快適さを守る必要がある場合
- 犬や猫などを飼っているお家の場合。
このような状況では、利用者さまの習慣に関わらずスリッパを履くことが正しい対応になります。
まとめ:訪問看護でのスリッパマナーを身につけ、信頼につなげよう
スリッパは明治時代に誕生し、異文化交流の中から「おもてなしの道具」として日本に根付いてきました。
訪問看護の現場では、その文化を受け継ぎながら、利用者さまへの敬意と清潔さを示す役割を果たしています。
「正しいスリッパのマナー」とは、履き方・脱ぎ方・向きの整え方まで含めた一連の所作です。
小さな心配りが、大きな信頼と安心につながります。足元のマナーを整えて、利用者さまに寄り添う訪問を心がけましょう。