毎日の入浴は、身体を清潔に保つだけでなく、心をほぐし生活の質（QOL）を高める大切な時間です。
しかし、加齢や病気による体力低下、関節や筋力の衰えなどによって、自宅浴槽への出入りや立ち座りが難しくなることがあります。
その結果、転倒や滑落といった事故の危険性が高まり、入浴自体が負担となってしまうケースも少なくありません。
そんな悩みを解消する介護用品のひとつが入浴台です。
入浴台とは、浴槽の底や縁に設置して安全に座れるようにしたり、浴槽をまたぐ動作をサポートしたりする福祉用具のこと。適切に使えば、入浴時の動作が安定し、介助者・利用者双方の負担を大きく減らせます。
本記事では、「入浴台とは何か」という基本から、メリット・デメリット、選び方のポイント、そして介護保険を活用した導入方法までを詳しく解説。
さらに、自宅での入浴が困難な場合に検討したい外部サービスについても触れつつ、最後にはおすすめの入浴台商品をご紹介します。
これを読めば、あなたや大切な家族にぴったりの入浴環境づくりが可能になります。
入浴台とは？安全な入浴のための必須アイテム
入浴台は主に以下のような役割を持っています。
- 浴槽へのスムーズな出入りのサポート
- 入浴中の安定した座位の確保
- 介護者の負担軽減
身体の自由が利かない場合、浴槽への跨ぎ動作や立ち座りは転倒や事故の危険が伴います。入浴台を使用することで、こうした危険を減らし、安心して入浴できる環境を作り出します。
一般的には浴槽内に置いて使う「浴槽台」や、浴槽の縁に渡して座って出入りを助ける「バスボード」があります。
入浴台のメリット
入浴台を使うことで得られるメリットは多く、主に次の点が挙げられます。
1. 転倒リスクの大幅軽減
入浴時の転倒は特に高齢者にとって大きなリスクです。入浴台を使うと、安定した座位が保て、滑りやすい浴室内での立ち座り動作をサポートします。
2. 身体的負担の軽減
浴槽への出入りが楽になり、足腰の負担が減ることで、疲れや痛みの軽減につながります。特に関節に痛みがある方や筋力が弱い方にとっては、大きな助けとなります。
3. 介助者の負担も軽減
介助者が無理な体勢を取らずに済み、介護の質が向上するとともに、介助者自身のケガ予防にもなります。
4. 自立入浴の促進
適切な入浴台を選ぶことで、自分の力で入浴動作を行いやすくなり、生活の自立支援に役立ちます。
入浴台のデメリット
一方で、入浴台にはデメリットも存在します。利用前にしっかり理解しておきましょう。
1. 肩まで浸かれない場合がある
浴槽内に置くタイプの入浴台は、座ることでお湯の深さが浅くなり、肩までお湯に浸かれないことがあります。全身浴を希望する方には注意が必要です。
2. 浴室や浴槽の広さを制限することがある
浴槽や洗い場のサイズによっては、入浴台の設置スペースが足りず、使用が難しい場合があります。事前にサイズを測ることが重要です。
3. 定期的な清掃・メンテナンスが必要
入浴台は水場で使うため、カビや汚れの発生リスクがあります。衛生的に使うためにこまめな清掃と点検が必要です。
4. 製品ごとの耐荷重・適合浴槽サイズに注意
体重制限や浴槽形状の適合性を誤ると、事故の原因になるため、製品の仕様をよく確認しましょう。
入浴台の選び方
入浴台を選ぶ際は、以下のポイントを必ず確認しましょう。
1. 使用者の身体状況
体力、筋力、バランス感覚、関節可動域などを把握し、使いやすい形状や高さを選びます。
2. 浴槽の形状と寸法
浴槽の内寸、縁の厚み、深さを計測し、それに適合する入浴台を選びます。
3. 耐荷重の確認
使用者の体重に十分耐えられるか、余裕を持った耐荷重を選ぶことが大切です。
4. 材質や安全機能
錆びにくいアルミ製や軽量プラスチック製、滑り止め加工の有無をチェックします。
5. 高さ調整機能
高さを調整できるタイプは、複数人での利用や将来的な体格変化にも対応できます。
6. 介助の有無
自立入浴か介助入浴かで選択するタイプが異なります。
入浴台の安全な使い方
入浴台を安全に使うために守るべきポイントは以下です。
- 設置前に浴槽や床が乾いているか確認する
- 吸盤や脚部がしっかり固定されているか確認する
- 使用前に安定性をテストする
- 入浴中は急な動きを避ける
- 使用後は水分を拭き取り、清掃・乾燥を徹底する
- 定期的に部品の劣化や破損を点検し、異常があれば使用を中止する
入浴台のメリット・デメリットまとめ
| 項目 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 転倒リスク | 大幅軽減 | – |
| 介護者負担 | 軽減可能 | – |
| 自立入浴 | サポート | – |
| 入浴の深さ | – | 肩まで浸かれない場合がある |
| 設置場所 | – | 広さや形状の制限あり |
| メンテナンス | – | 定期的な清掃が必要 |
| 耐荷重 | – | 体重制限に注意が必要 |
介護保険の活用（第一選択肢）
入浴台導入の際、まず検討すべきは介護保険制度の利用です。
要介護認定を受けていれば、入浴台は「特定福祉用具購入費」の対象となる場合があり、年間10万円までの購入費に対して自己負担1〜3割で利用できます。
利用のメリット
- 経済的負担を大幅に軽減できる
- ケアマネジャーや福祉用具専門相談員が適切な商品を提案
- 設置環境や身体状態に合った選定が可能
申請はケアマネジャーを通じて行い、事前に必要書類や見積もりを揃えておくことが大切です。
自宅入浴と外部サービスの使い分け
自宅での入浴は、浴室環境や動線、本人の体力・バランス能力に左右されます。特に日常生活動作（ADL）の中でも入浴は難易度が高く、自宅で継続が難しいケースが多いです。
その場合は、デイサービスや訪問入浴といった外部サービスの活用が有効です。
- デイサービス：施設の浴室で入浴介助を受けられ、リハビリや交流も可能
- 訪問入浴：専門スタッフが浴槽を持ち込み、自宅で入浴介助を行う
これらを適切に組み合わせることで、安全性と快適性を両立できます。
おすすめの入浴台紹介
ここでは実際の介護現場や家庭で人気の入浴台を紹介します。購入の参考にしてください。
1. アロン化成 安寿 浴槽台「あしぴた」
- 軽量で持ち運びがしやすい
- 吸盤付きで浴槽内での安定性抜群
- 滑り止め加工で安全性向上
- 高さ調整機能付きで幅広い浴槽に対応
2. リッチェル 介護用浴槽台
- コンパクトで狭い浴槽にも設置可能
- 耐荷重100kg以上で安心
- 抗菌・防カビ加工で清潔に使える
まとめ：入浴台で安全・快適な入浴を！
介護用の入浴台は、高齢者や身体が不自由な方の安全な入浴を支える重要な福祉用具です。選ぶ際は使用者の身体状況や浴室環境、安全性、使いやすさを総合的に判断しましょう。
導入は、まず介護保険の活用を第一選択肢に。要介護認定を受けていれば、購入やレンタルに補助が受けられ、自己負担を大幅に軽減できます。さらに、専門家から適切なアドバイスを受けながら、自分に合った製品を選べるメリットもあります。
入浴はADL（日常生活動作）の中でも特に難易度が高く、自宅環境によっては困難な場合があります。そのため、デイサービスや訪問入浴など外部サービスを利用する方も多いですが、費用や利用頻度を考慮しつつ、自宅での入浴環境を整えることも重要です。
適切な入浴台を正しく設置・使用すれば、転倒リスクを減らし、介助者・本人双方の負担を軽減できます。さらに、浴槽手すりや滑り止めマットを併用することで、安全性は一層向上します。
入浴は清潔保持だけでなく、リラックスや生活の質（QOL）向上にも直結する大切な時間です。介護保険を上手に活用し、必要に応じて外部サービスと併用しながら、安全で快適な入浴環境を整えましょう。
