身体状況により、敷布団での生活が難しくなった際に導入を検討するベッドについて説明します。
医療・介護業界ではベッドのことを『特殊寝台』と呼びます。
特殊寝台は、介護が必要な方や身体に障がいのある方の生活をサポートする重要な福祉用具です。
一般的なベッドとは異なり、特殊な機能を備えており、使用者の快適性と介護者の負担軽減を目的としています。
特殊寝台の定義と特徴
特殊寝台とは、背中や脚の傾斜角度を調節できる機能、または床の高さを調整できる機能があるベッドのことを指します。
これらの機能により、使用者の体位を適切に保ち、介護者による介助を容易にします。
主な特徴:
- 背部と脚部の角度調整
- ベッド全体の高さ調整
- 電動操作による簡単な調整
- 介護保険制度の対象となる場合が多い
特殊寝台の種類
特殊寝台には、主に以下のような種類があります:
- 1モーターベッド:背部のみが動く最もシンプルなタイプ
いわゆる【背上げ】機能だけのベッドになります。最も安価なタイプになります。 - 2モーターベッド:背部と脚部が別々に動くタイプ
足のムクミの軽減のために活用されることがあります。 - 3モーターベッド:背部、脚部、高さ調整が可能なタイプ
ベッドの高さを変えられることで、立ち座り動作が行いやすくなります。 - 垂直昇降機能付きベッド:ベッド全体が垂直に昇降するタイプ
3モーターのベッドはベッドの高さを変える際に斜めに昇降してしまいます。そのため、部屋の大きさが限られている環境では有効に活用することができます。
ただし、ベッドの高さを上げるほど、ベッドが不安定になり、ガタツキを感じることがあるので、注意が必要です。
特殊寝台の価格帯
特殊寝台の価格は、機能や品質によって大きく異なります。以下に一例を示します:
- 1モーターベッド(レギュラータイプ):希望小売価格約20万5,000円
- 2モーターベッド(和夢”純”):希望小売価格約35万4,000円
- 3モーターベッド(垂直昇降機能付き):希望小売価格約26万5,000円
ただし、介護保険制度を利用する場合、レンタル料金は月額700円から1,500円程度となることが多いです。
介護保険における介護度別レンタル可能な福祉用具について
要支援1・2、要介護1の場合:
- 手すり
- 歩行器
- 歩行補助つえ
- スロープ
- 自動排泄処理装置(尿のみを自動的に吸引する機能のもの)
要介護2〜3の場合:
上記に加えて以下の用具もレンタル可能
- 特殊寝台・特殊寝台付属品
- 車いす・車いす付属品
- 床ずれ防止用具
- 体位変換器
- 移動用リフト
- 徘徊感知機器
要介護4〜5の場合:
上記のすべてに加えて
- 自動排泄処理装置(尿のみを自動的に吸引する機能のものを除く)
ただし、要支援1・2、要介護1の方でも、特定の疾患や状態によっては例外的に特殊寝台などの給付が認められる場合があります。
担当のケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談することをお勧めします。
特殊寝台の付属品
特殊寝台には、様々な付属品があり、使用者の快適性や安全性を高めます:
- サイドレール:転落防止用の柵
- マットレス:体圧分散や褥瘡予防のための特殊な素材を使用
- オーバーベッドテーブル:ベッド上で食事や作業ができるテーブル
- 介助バー:起き上がりや移乗を助ける手すり
これらの付属品もレンタルや購入が可能で、価格帯は以下の通りです:
- サイドレール:希望小売価格約2万円、レンタル料金月額50円から500円
- プレグラーマットレス:希望小売価格約4万4,000円、レンタル料金月額200円から1,200円
- オーバーベッドテーブル:希望小売価格約10万6,000円、レンタル料金月額400円から1,200円
特殊寝台の利点
- 体位変換の容易さ:電動で角度調整ができるため、介護者の負担が軽減されます。
- 褥瘡(じょくそう)予防:適切な体位変換により、長時間同じ姿勢でいることによる褥瘡のリスクを減らせます。
- 自立支援:使用者自身で操作できる場合、自立心の向上につながります。
- 介護の効率化:高さ調整機能により、介護者の作業姿勢が改善され、腰痛予防にもなります。
特殊寝台の選び方
- 使用者の身体状況:障がいの程度や介護の必要性に応じて機能を選びます。
- 介護者の状況:介護者の体力や介護の頻度を考慮します。
- 設置場所:部屋の広さや間取りに合わせてサイズを選びます。
- 予算:購入かレンタルか、介護保険の利用可能性を検討します。
介護保険制度と特殊寝台
特殊寝台は介護保険制度の福祉用具貸与の対象となっています。
要介護認定を受けた方は、原則として1割から3割の自己負担でレンタルすることができます。
特殊寝台の使用上の注意点
- 安全な操作:誤操作による事故を防ぐため、使用方法を十分に理解しましょう。
- 定期的なメンテナンス:故障や不具合を防ぐため、定期的な点検が必要です。
- 清潔保持:衛生面に配慮し、定期的な清掃や消毒を行いましょう。
- 適切な体位:長時間同じ姿勢にならないよう、定期的な体位変換を心がけましょう。
特殊寝台と他の福祉用具との組み合わせ
特殊寝台は、他の福祉用具と組み合わせることで、より効果的に使用できます:
- 移動用リフト:ベッドから車いすへの移乗を補助します。
- 床ずれ防止用具:特殊なマットレスと組み合わせることで、褥瘡予防効果が高まります。
- 体位変換器:特殊寝台の機能と併用することで、より細かな体位調整が可能になります。
特殊寝台の導入手順
- ケアマネージャーや福祉用具専門相談員に相談
- 身体状況や生活環境のアセスメント
- 適切な特殊寝台の選定
- レンタルまたは購入の手続き
- 設置と使用方法の説明
- 定期的なフォローアップと調整
まとめ
特殊寝台は、介護が必要な方や障がいのある方の生活の質を大きく向上させる重要な福祉用具です。適切な選択と使用により、使用者の快適性と安全性が高まるだけでなく、介護者の負担も軽減されます。介護保険制度を利用することで、比較的低コストで利用できる場合も多いため、専門家に相談しながら、個々の状況に合った特殊寝台を選ぶことが大切です。
市販のベッドよりも介護保険でのベッドのレンタルであれば、以下のようばメリット・デメリットがあります。
レンタルのメリット
- 故障時に修理費がかからず、基本は交換となる。
- 必要が無くなれば返却することができる。
- ベッドの搬入、搬出について福祉用具業者さんが対応してくれる。
- ベッドの移動時にも福祉用具業者さんに相談すると対応してくれる。
- 身体状況に合わせたベッドの種類に交換ができる。
- レンタル費用は月極が基本も、日割り計算してくれることがある。
- 電動ベッドになる。
- ベッドに装着する手すりなども必要に合わせて変更可能。
購入のデメリット
- 故障すると、修理費や新たな購入費が必要になる。
- 身体状況に合わせたベッドの種類の変更、調整が難しくなる。
- 購入してしまえば、移動や廃棄するのにも人手が必要。
- 粗大ごみで処分するのに手間、時間がかかる。
特殊寝台の導入は、単にベッドを変えるだけではなく、生活全体の質を向上させる大きな一歩となります。使用者と介護者双方にとって、より快適で安全な生活環境を整えるための重要な選択肢の一つとして、特殊寝台の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
以上、参考になれば幸いです。