聴診器は、体内の音を聴くための医療器具で、主に心臓音、呼吸音、血管音などを聴取するために使用されます。
初心者の方にも理解しやすいよう、聴診器の基本的な構造や種類、使い方について説明します。
聴診器の基本構造
聴診器は主に以下の部分で構成されています1:
- イアピース: 耳に挿入する部分
- 耳管: 左右の耳に伸びた金属管
- チューブ: 音を伝える管
- チェストピース: 体に当てて音を拾う部分
聴診器の種類
聴診器には主に以下の種類があります:
- シングルタイプ: ダイアフラム面のみの一般的な聴診器で、主に血圧測定に使用されます。
- ダブルタイプ: ダイアフラム面とベル面がリバーシブルになっているタイプで、用途に応じて使い分けができます。
- 電子聴診器: 最新技術を用いて、周囲の雑音を低減しながら微弱な音を聴き取りやすくする聴診器です。
ダイアフラムとベル
ダブルタイプの聴診器には、ダイアフラム面とベル面があります:
- ダイアフラム面: 薄い振動板(膜)が張られた面で、高周波音を聴くのに適しています。肺や腹部の音など、広い範囲を聴く際に使用されます。
- ベル面: ラッパ状の集音部分で、低周波音を聴くのに適しています。心音や血管音を聴く際に使用されます。
聴診器の選び方
聴診器を選ぶ際は、以下のポイントを考慮しましょう:
- 用途: 医療現場で使用するか、家庭での健康チェック用かを考慮します。
- タイプ: 実習を控えている看護学生や医療従事者はダブルタイプがおすすめです。
- 音質: 聴き取りやすさを重視する場合は、1万円以上の製品を選ぶとよいでしょう。
- サイズ: 小児用や成人用など、対象に合わせたサイズを選びます。
- 素材: チェストピースやチューブの素材によって、耐久性や使用感が異なります。
聴診器の使い方
聴診器を正しく使用するためのポイントは以下の通りです:
- イヤーピースを正しい向きで耳に挿入します。
- チェストピースを適切な部位に当てます。
- ダブルタイプの場合、ベル面と膜面を適切に切り替えて使用します。
- 心音を聴く際は、呼吸音に重ならないよう、患者に数秒間息を止めてもらうとよいでしょう。
聴診器の手入れ
聴診器を長く使用するためには、適切な手入れが必要です:
- 使用後は消毒用アルコールで拭き、清潔に保ちます。
- チューブやイヤーピースは定期的に交換します。
- 直射日光や高温多湿を避けて保管します。
訪問看護(リハビリ)時に活用する場面は
血圧測定時
血圧測定時に聴診器を使用する主な理由は、コロトコフ音と呼ばれる血流の音を聴き取るためです。
この方法は以下の理由で重要です:
- 正確な測定: コロトコフ音を聴くことで、最高血圧(収縮期血圧)と最低血圧(拡張期血圧)を正確に判定できます。
- 血流の変化を捉える: 上腕の動脈を圧迫し、徐々に圧力を解放する過程で、血流の再開と変化を音で確認できます。
- 客観的な測定: 1905年に発見されたこの方法(コロトコフ法)は、血圧を客観的に測定する最初の方法として確立されました。
- 水銀血圧計との併用: 従来の水銀血圧計では、聴診器でコロトコフ音を聴きながら目盛りを読み取ることで血圧を測定していました。
聴診器を使用する血圧測定は、特に医療現場で重要です。ただし、近年では自動血圧計の普及により、一般の方々が家庭で使用する場合は聴診器を必要としない方法も増えています
呼吸音を確認するために
呼吸音を確認する際に聴診器を使用する主な理由は、以下のとおりです:
- 正確な音の聴取: 聴診器を使用することで、肺や気道内の微細な音を正確に聴き取ることができます。これにより、正常な呼吸音と異常な呼吸音を区別することが可能になります。
- 呼吸器系の状態評価: 呼吸音を聴くことで、肺の状態や気道の状況を非侵襲的に評価できます。これは様々な呼吸器疾患の診断や経過観察に役立ちます。
- 音の分類と位置の特定: 聴診器を使用することで、気管支音、気管支肺胞音、肺胞音など、異なる種類の呼吸音を識別し、それぞれの聴取位置を特定することができます。
- 病態の把握: 正常な呼吸音からの逸脱を聴き取ることで、肺炎、気管支喘息、心不全などの疾患を推測することができます。
- 経時的な評価: 定期的に呼吸音を聴診することで、患者の状態の変化を追跡し、治療の効果を評価することができます。
聴診器を使用することで、これらの重要な情報を非侵襲的かつ迅速に得ることができ、患者の呼吸器系の状態を総合的に評価することが可能になります。
まとめ
聴診器は医療現場で欠かせない道具であり、適切な選び方と使用方法を理解することが重要です。初心者の方は、まずはシングルタイプやダブルタイプの基本的な聴診器から始め、徐々に使い方に慣れていくことをおすすめします。
聴診技術の向上には練習が必要ですが、正しい知識を身につけることで、より効果的に体内音を聴き取ることができるようになります。
以上、参考になれば幸いです。