訪問看護ステーション数は近年着実に増加しており、以下にその遷移を詳しく説明します。
全国の訪問看護ステーション数の推移
訪問看護ステーション数は2010年から一貫して増加傾向にあります:
- 2010年(平成22年)4月1日時点: 5,731箇所
- 2023年(令和5年)4月1日時点: 15,697箇所
この13年間で訪問看護ステーション数はおよそ3倍に増加しました。
増加の特徴
- 2010年から2023年にかけて毎年増加を続けています。
- 2012年度の診療報酬・介護報酬同時改定後、民間事業者の参入が急速に進みました。
都道府県別の状況 (2023年時点)
訪問看護ステーション数が最も多い都道府県:
- 大阪府: 1,769箇所
- 東京都: 1,539箇所
- 愛知県: 1,035箇所
訪問看護ステーション数が最も少ない都道府県:
- 鳥取県: 74箇所
- 山梨県: 77箇所
- 秋田県: 79箇所
課題
訪問看護ステーション数は増加傾向にありますが、同時に閉鎖する事業所も増加しています。2012年には209箇所だった閉鎖数が、2020年には541箇所に増加しました。
閉鎖の要因には、事業所の規模、開設年数、運営組織などの組織要因と、所在地域の競争の程度などの地域要因が影響していると考えられます。特に開設3年未満の新しい事業所の閉鎖が多いことが指摘されています。
訪問看護ステーション数は増加傾向にあるものの、安定的なサービス供給量の確保は依然として課題となっています。
訪問看護ステーションの増加要因は、
社会的背景
- 超高齢社会の進行
- 要介護高齢者の増加
- 在宅看取りのニーズの高まり
- 医療環境の変化
- 病院の在院日数の短縮
- 医療依存度の高い在宅療養者の増加
- 家族構成の変化
- 単独世帯および夫婦のみの世帯の増加
- 家族介護力の低下
政策的要因
- 介護保険法の施行(2000年)
- 訪問看護が介護保険法に基づくサービスとして位置づけられた
- 介護の社会化が進み、訪問看護の利用者が増加
- 地域包括ケアシステムの推進
- 訪問看護が地域包括ケアシステムにおいて重要な役割を担う
- 病床数の削減政策
- 医療の効率化のために国が病院の病床数を減少させる方針
需要の増加
経営的要因
- 民間事業者の参入
- 介護保険法施行により、多様なサービス提供者の参入が可能に
- 訪問看護の収益性
- 他の介護サービスと比較して収益性が高いと認識されている
これらの要因が複合的に作用し、訪問看護ステーションの増加につながっています。特に、高齢化社会の進行と政策的な後押しが大きな要因となっています。
地域包括ケアシステムにおける訪問看護の役割は多岐にわたっている。
在宅医療・介護の中核的存在
- 医療と介護の橋渡し
- 医療機関と介護サービス事業所の連携を促進
- 多職種間のコミュニケーションを円滑化
- 包括的な健康管理
- 患者の治療や健康管理を実施
- 医療依存度の高い在宅療養者へのケア提供
利用者と家族への支援
- 自立支援
- 患者の自分らしい生活の実現をサポート
- 日常生活動作(ADL)の維持・向上を目指したケア
- 家族介護者支援
- 家族の不安や精神的負担の軽減
- 介護方法の指導や相談対応
- 意思決定支援
- 患者と家族の希望を尊重したケア計画の立案
- 終末期ケアにおける意思決定のサポート
多職種連携の推進
- チーム医療の調整役
- 医師、薬剤師、介護士、ケアマネジャーなど多職種との連携推進
- ケアカンファレンスの開催や参加
- 情報共有の中心的役割
- 患者の状態や変化に関する情報を多職種間で共有
- 切れ目のないケア提供のための連携強化
地域包括ケアシステムの機能拡大
- サービス提供範囲の拡大
- 自宅だけでなく、介護施設等への訪問看護の拡大
- 重症度の高い利用者への対応
- 予防・相談機能の強化
- 健康相談や予防的ケアの提供
- 地域住民への健康教育の実施
- 看護小規模多機能型居宅介護の推進
- 通い・泊まり・訪問サービスを組み合わせた柔軟なケア提供
質の向上と人材育成
- 専門性の高い看護師の育成
- 在宅ケアに特化した知識・技術の習得
- 管理者のマネジメント力向上
- 看護基礎教育の強化
- 地域包括ケアシステムに対応できる人材の育成
訪問看護は、地域包括ケアシステムにおいて医療と介護をつなぐ重要な役割を担っており、その機能と質の向上が求められています。2025年に向けて、訪問看護の量的拡大、機能拡大、質の向上を目指し、地域のニーズに応じたきめ細かなサービス提供が期待されています。
まとめ
訪問看護ステーションは増加しており、各地域における利用者様の取り合いなど競争が段々と強くなっている現状を感じます。訪問看護ステーションとケアマネジャーさんが所属する居宅介護事業所や地域包括支援センターを法人として持っている場合はかなりの強みになります。
また、医療機関から退院後の同じ法人の訪問看護ステーションに繋げていくパターンもあるため、医療法人がもっている訪問看護ステーションも有利に感じます。
最近が株式会社が経営する訪問看護ステーションも増えており、利益の追求とサービスの質の担保など難しい課題を感じることも実務ではあります。
私の経験として訪問看護ステーションを閉鎖するにあたり、利用者様やケアマネジャー様にかかる経済的、精神的な負担を感じる場面が多くありました。利用者様にとっては、今まで継続していた日常生活に溶け込んでいるサービスが無くなることは日常が阻害されることになります。
訪問看護ステーションとしてはサービスの担保は大切ですが、継続した経営ができるような利益の追求や業務の効率化を考えることは大切になります。
以上、参考になれば幸いです。