訪問看護の仕事は、病院や施設とは違い、スタッフ一人ひとりの「準備力」と「現場での対応力」がサービスの質に直結します。
この記事では、訪問看護ステーションで実際に働く中で気がついた、「事前に知っておくと仕事がぐっと楽になる豆知識」をまとめて紹介します。
これから訪問看護を始める方、すでに働いているけれど日々の困りごとを改善したい方にとって、少しでも役立てば幸いです。
1. バイタル機器の電池問題は必ず対策しておく
パルスオキシメーターは乾電池式が多い
訪問看護では、充電式ではなく、比較的安価な乾電池式の機器をスタッフに配布することがほとんどです。
しかし、現場では測定値(SpO₂・脈拍)に集中することが多く、電池残量のチェックを忘れてしまいます。
とくに以下の場面では電池の消耗が早まります。
- 在宅酸素療法中の利用者さんの動脈血酸素飽和度の変化の観察
- 嚥下評価で数分以上装着する
- 状態悪化時の長時間観察
肝心な時に「電源が入らない!」は絶対避けたいトラブルです。

対策:必ず予備の電池を訪問バッグにいれておく
私は必ず、単4電池を2本、訪問バッグに常備するようにしています。
その場で交換できるだけで、精神的負担とリスクが大きく減ります。
利用者さんにも備えているとの印象を与えることができ、感心されます。
2. 体温計は電源の切り忘れに注意
体温計もボタン電池で動くため、使い方次第で消耗が早く、訪問時に突然電源が入らなくなることが起こります。
訪問先での交換は難しい
ボタン電池式は精密ドライバーが必要なため、訪問中に交換するのはほぼ不可能です。

対策
- 使用後は必ず電源を切る
- 残量サイン(液晶の点滅や表示)を見つけたら早めに交換
- 交換できないタイプなら、本体ごと予備を持つ
- 1件目の訪問の前に必ずチェック
- 緊急時は利用者さんの家庭用体温計を借りるのもひとつの手
実体験として、残量表示が出てもすぐには測れなくならず、30件ほど使えたこともあります。
3. 靴下の予備は必須アイテム
訪問看護は外回りの連続なので、靴下が濡れたり汚れたりします。
靴下が汚れるタイミングは予測不能
- 急な雨
- 砂利道や水たまり
- 利用者さんのご自宅での汚れ
濡れたまま訪問すると、住居を汚すリスクやスタッフ自身の不快感が大きいため、予備の靴下を1足入れておくのは強くおすすめします。
靴の色にも注意
白い靴は汚れが目立ちやすく、訪問先のご家族も靴の表面・中敷きの汚れまでよく見ています。
汚れが目立ちにくい色の靴を選ぶと安心できます。
4. 雨対策は折りたたみ傘+レインコートが最強
移動手段は徒歩・自転車・バイク・車のいずれも「雨の影響を受ける」のが訪問看護の特徴です。
- 駐輪場から家まで距離がある
- 屋根がない場所で荷物を持つ
- ひさしが狭い家もある
どの場面でも濡れると印象が悪く、体調を崩すきっかけになります。
準備しておきたいアイテム
- 折りたたみ傘
- レインコート
- 雨の日用のレインブーツ
ユニフォームや訪問バッグが濡れるのを最小限にできます。
5. バイク移動は暖機運転と急加速禁止が必須
バイクを使う場合にはバイクトラブルは重大な業務支障に直結します。

暖機運転の理由(やさしい説明)
- エンジンをちょっと温めると壊れにくくなる
- オイルが温まり、全体にしっかり回る
- 冬は必須、夏でも1分くらいはやると安心
「運動の前にストレッチするのと同じ」と思えばOKです。
急加速は事故と故障の原因
- アクセルはゆっくり回す
- ブレーキは必ず両手
- 坂道発進は特に注意
私は過去、坂道で急発進してしまい、お向かいの家の門扉を凹ませて弁償したことがあります。
物損事故でも、謝罪・修理費・始末書…と精神的ダメージが大きいので本当に要注意です。
すす詰まりはエンジントラブルの元
急加速を繰り返すとマフラーにすすが溜まり、エンジンがかかりにくくなります。
エンジンがかからないバイクは、真冬でも汗だくで押すことになり本当に大変です。
6. キーボックスと鍵の管理は信用に直結する最重要ポイント
独居の利用者さんなどに使われるキーボックスは、番号漏洩や鍵の紛失が重大リスクになります。

注意したいポイント
- 暗証番号は絶対に他人に見られないようにする
- 家の鍵を取り出したら「置き場所」を必ず1つに決める
- 例:玄関の棚・テーブルの上など
鍵を紛失した場合の影響
- 訪問スケジュールが崩れる
- 利用者さんの生活に重大な支障
- ステーション上層部が謝罪に出向くケースも
- 鍵交換を事業所負担で行うこともある
実際に、同僚が鍵を紛失してステーションの部長が謝罪と鍵交換対応を行った例もあります。
自分のバイク・車の鍵も同じく注意
ポケット・バッグ・上着に「無意識で入れた」結果、探し回るトラブルが多発します。
鍵をしまう場所を固定化する
これが最も効果的です。
季節で場所を変えるのもおすすめです:
- 冬:ファスナー付きの上着ポケット
- 夏:訪問バッグの同じポケット
キーホルダーで存在感を出す方法もあります。
7. 書類・手帳は予備を持つ方が効率的
紙でのバイタル記録や訪問記録を使うステーションでは、予備の書類を常備することで仕事の効率が格段に上がります。
- 「次回持ってくればいいや」と思うと忘れる
- 物忘れや管理コストが増える
- 記録を残せず後で書き直す羽目になる
その場で補充できるよう、必要書類は1〜2セット予備を入れておくのがおすすめです。

まとめ:小さな準備が大きな安心につながる
訪問看護では、ちょっとした準備不足がトラブルに直結しやすい現場です。
しかし、今回紹介したような「小さな工夫」を積み重ねておくことで、訪問がスムーズになり、利用者さんとの信頼関係も深まります。
- 予備電池
- 体温計チェック
- 予備の靴下
- 雨対策
- バイクの暖機と安全運転
- 鍵の管理ルール
- 書類の予備
これらはどれも今日からすぐに実践できます。
事前準備をしっかりとしておき、安心して訪問業務に専念していきましょう。





