ここ数年、「自費リハビリ」に取り組む事業所が全国的に増えています。特に脳卒中後遺症、パーキンソン病、脊髄損傷など、特定の疾患に特化した専門自費リハビリ施設が注目を集めています。
かつては、リハビリ=医療保険・介護保険を使って受けるものという認識が一般的でした。しかし今、自費リハビリという新しい選択肢が生まれ、当事者・家族にとっても大きな可能性を秘めています。
本記事では、自費リハビリの特徴、メリット・デメリット、対象者像、開業の背景までを、現場目線で分かりやすく解説します。
自費リハビリとは?|保険に頼らない新しい選択肢
「自費リハビリ」とは、公的保険(医療保険・介護保険)を利用せず、全額自己負担で受けるリハビリサービスのことです。対象は高齢者だけでなく、若年者の方やスポーツ障害、退院直後の回復期にも及びます。
✅ 特徴的な自費リハビリのスタイル
- 完全予約制・1対1でのマンツーマン対応
- 柔道整復師、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)などの専門家が在籍
- 高度なトレーニング機器や独自プログラムを導入
- 医師の指示書不要(ただし提出を求める施設もあり)
自費リハビリは保険制度に縛られず、「利用者の希望に寄り添った個別性の高い支援」ができる点で非常に自由度が高いのが特徴です。
なぜ自費リハビリ開業が増えているのか?
1. 保険制度の制限によるリハビリの「打ち切り問題」
医療保険のリハビリは「発症から〇日まで」といった日数制限があります。たとえば脳卒中では、最大で180日程度までが保険適用の範囲とされており、その後は急にリハビリが受けられなくなるケースも。
退院後は病院にて外来リハビリを継続して受けれることも以前はありましたが、現在は介護保険もしくは地域でのサービスに移行するケースが多くなっています。
介護保険では日数制限こそありませんが、**「支給限度基準額」**によるサービス提供量の制限があり、必要十分な量のリハビリが提供されないこともしばしばです。
2. 本人・家族の「もっと回復したい」というニーズ
制度の範囲内では満足いくリハビリができない。そう感じた利用者や家族が、自費リハビリに希望を託すようになってきました。
3. 専門職の新たな働き方として
理学療法士・作業療法士などリハビリ職にとっても、自費リハはやりがいと自由度の高いキャリア選択肢として注目されています。現場では「保険点数ではなく、成果で評価される」ことで、やりがいを感じる専門職も増加中です。
自費リハビリのメリット|保険にない柔軟さと自由度
① リハビリの継続期間に制限がない
医療保険では最大180日、疾患によってはもっと期間が短くなります。介護保険では限度額内でしか受けられないという制限がありますが、自費リハビリには一切の制限がありません。
そのため、「まだ回復を目指したい」「もっと動けるようになりたい」という方が、納得いくまでリハビリを継続できるのが大きな利点です。
② リハビリ時間を自由に設定できる
保険では基本的に20分単位での算定が一般的で、長時間のリハビリは難しいのが現実。しかし自費リハビリであれば、60分、90分、120分など利用者に合わせた時間設定が可能。
疲れやすい方には短め、意欲の高い方には集中リハなど、柔軟にスケジュールを調整できます。
③ 完全個別対応|1対1のきめ細やかな支援
自費リハビリは1対1でのマンツーマン対応が基本。他の利用者と合同で行うグループリハとは異なり、状態や目標に応じたオーダーメイドのリハビリが可能です。
その分、リハビリの質が高まり、成果も出やすいという声も増えています。
自費リハビリのデメリット|費用・地域差・医療連携の難しさ
① 全額自己負担のため、経済的な負担が大きい
最大のデメリットはやはり費用。
料金は事業所によって差がありますが、60分あたり8,000~12,000円が相場です。継続的に通う場合、月に数万円〜十数万円かかるケースもあり、家計への影響は無視できません。
※なお、回数券やセット割引などでお得になる場合もあります。
② 地域格差があり、地方にはまだまだ少ない
自費リハビリ施設の多くは、東京・大阪・名古屋などの都市部に集中しています。地方では選択肢が少なく、アクセスの悪さや交通費・宿泊費の負担がネックになります。
③ 医療的な連携が薄い場合がある
保険リハビリは医師の指示書をもとに提供されますが、自費リハは医師の関与が必須ではありません。
そのため、持病や服薬の情報が不十分なままリハビリを始めてしまい、安全性に問題が出るケースもあります。
ただし、近年では医療機関との連携を重視し、検査データや紹介状の提出を求める施設も増加しており、安全性の確保に努める動きも広がっています。
自費リハビリはどんな人に向いている?
以下のような方には、自費リハビリの利用が特におすすめです。
状況 | 具体例 |
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保険リハが終了してしまったが、まだ改善したい | 脳卒中の後遺症が残る方など |
リハビリの量・質に不満がある | 週1回20分では回復が遅すぎると感じる |
他者と一緒よりも個別で集中したい | 認知症の方や高い集中力が必要なリハ |
若年層・働き盛りで保険の対象外 | スポーツ障害、術後回復など |
結論|自費リハビリ開業は今後さらに増加へ
自費リハビリは、「制度の枠にとらわれない支援」を実現できる、今注目のリハビリ手段です。
- 制限のない自由なプログラム提供
- 長時間かつ個別対応での質の高い支援
- 保険外での新たなビジネスモデル
こうしたメリットから、今後も自費リハビリでの開業は加速していくと考えられます。現場の専門職にとっても、リハビリ職の新たな可能性を切り拓くチャンスです。
利用者側としても、「保険が切れたから終わり」ではなく、「続けたいなら自費で選べる」という新たな道があるということを、ぜひ知っておいてほしいと感じます。
補足:自費リハビリを探すには?
「自費リハビリ 地域名」「脳卒中 自費リハ」などのキーワードでインターネット検索すると、各地の事業所が見つかります。比較サイトや口コミレビューも活用して、信頼できる施設を選びましょう。