ボバース法とは?
ボバース法(ボバース概念)は、神経学的障害を持つ患者の運動機能を改善し、潜在能力を引き出すためのリハビリテーションアプローチです。
この方法は、1940年代にイギリスで理学療法士のベルタ・ボバースとその夫で医師のカレル・ボバースによって開発されました。
このアプローチは、単なる運動の反復ではなく、姿勢制御や感覚刺激を重視し、患者一人ひとりに合わせた個別的な治療を行うことが特徴です。
特に脳性麻痺や脳卒中など、中枢神経疾患による障害の改善に用いられています。
ボバース法の基本的な考え方
1. 全人的アプローチ
- ボバース法は、患者の身体だけでなく、生活環境や心理的要因も含めた全人的な視点で治療を行います。
- 神経学的病態が身体全体に影響することを前提に、患者の生活経験や背景を考慮します。
2. 姿勢制御と感覚刺激
- 運動機能の改善には、姿勢制御(postural control)が重要とされます。
- 感覚刺激(触覚や視覚など)を通じて患者の運動反応を引き出す「ファシリテーション」という技術が用いられます。
3. 個別化された治療
- 患者ごとの運動能力や潜在能力を評価し、それに基づいて治療プランを作成します。
- 特定の動きを強制するのではなく、自然な運動パターンを促進することが目的です。
ボバース法の特徴
1. 運動と姿勢の統合
- 運動パフォーマンスは姿勢制御と選択的運動(specific movement)の統合によって向上します。これには体幹や頭部の安定性が重要です。
2. 非定型的運動の最小化
- 患者が代償的な運動パターン(非定型的運動)に頼らないようにすることで、より効率的で自然な動きを目指します。
3. 24時間アプローチ
- リハビリテーションは治療時間内だけでなく、日常生活全般においても継続されるべきだという考え方です。これにより活動性や社会参加を促進します。
ボバース法の適用例
1. 脳性麻痺
- 子どもの脳性麻痺では、感覚刺激と姿勢制御を通じて運動機能を改善します。
- 両手や下肢の協調性向上にも役立ちます。
2. 脳卒中後遺症
- 麻痺側の機能回復を目指し、非麻痺側への過度な依存を減らすことが目的です。
- 日常生活で必要な基本的な運動能力(立つ・歩くなど)の回復が主眼となります.
メリットとデメリット
メリット
- 個別化された治療:患者ごとのニーズに応じた柔軟な対応が可能。
- 全人的アプローチ:身体だけでなく心理面や社会参加も重視。
- 感覚刺激による効果:自然な運動パターンを引き出すことができる。
デメリット
- 科学的エビデンス不足:結果が個別化されるため、標準化された評価が難しい。
- 実施者のスキル依存:治療効果はセラピストの技術力に大きく依存する。
現代におけるボバース法
ボバース法は現在でも広く使われていますが、新しいリハビリテーション手法(例:CI療法やHABIT療法)との比較や統合も進んでいます。これら新しい方法では、より科学的エビデンスに基づいたアプローチが強調されています。
例えば:
- CI療法:麻痺側のみを使うことで機能改善を図る方法。
- HABIT療法:両手を使った訓練で協調性向上を目指す方法。
これらはボバース法と共通点も多いですが、集中訓練やグループセッションなど異なる特徴も持っています。
まとめ
ボバース法は、中枢神経疾患による障害改善において重要な役割を果たしてきたリハビリテーション概念です。
その柔軟性と個別対応力は大きな魅力ですが、一方で科学的エビデンス不足という課題も抱えています。
現代では新しい方法との連携も進んでおり、多様なニーズに応える形で進化し続けています。